キャリア教育コラム

デジタル教科書の導入で授業はどう変わる?メリット、デメリットとは

更新日:2018/10/11

生徒が教科書をタブレット端末などで読む「デジタル教科書」の導入が2019年から導入されることが閣議決定され、文部科学省から全国の教育委員会等に向けて通知が出されました。デジタル教科書の導入によって教育の仕組みや指導法はどのように変わっていくのでしょうか。ここでは「デジタル教科書」について解説いたします。

 

デジタル教科書とは

 

デジタル教科書について一般社団法人デジタル教科書教材協議会では以下のように説明しています。

”デジタル教科書とは、デジタル機器や情報端末向けの教材のうち、既存の教科書の内容と、それを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集移動、追加、削除などの基本機能を備えるものを指します。主に教員は電子黒板等により子供たちに提示して指導するためのデジタル教科書と、主に子供たちが個々の情報端末で学習するためのデジタル教科書に大別されます。特に、学習者用デジタル教科書は、単に紙媒体の教科書の内容がそのまま表されるだけではなく、インターネットの活用、教員と子どもたち、または子どもたち同士間の双方向性のある授業が達成されるものが求められます。”

引用:一般社団法人デジタル教科書教材協議会「デジタル教科書教材とは」

 

つまり、単に紙の教科書がデジタル端末で読めるだけでなく、教科書の編集や書き込み、インターネットへの接続によって疑問点を深堀できるなど、従来の教科書にはない教科書の使い方ができるようになると想像されます。

 

デジタル教科書の導入の背景

デジタル教科書の導入の背景には新学習指導要領が大きく関わっています。新学習指導要領によって推奨されているアクティブラーニング・ディープラーニング・ICT教育などを活用し、これからの時代に必要となる、「主体的・対話的・深い学び」を習得することを主たる目的としています。義務教育環境からデジタル教育、プログラミング的思考の教育環境の整備も進む中、教材のデジタル化も同時に進められていることが背景にあります。
しかしながらデジタル教科書の使用は学校や教育委員会の判断とする点、一般教科書と違い国が小中学校の教科書であっても全額負担することは無いので、導入の費用負担の課題などが課題とされています。

 

デジタル教科書のメリット

デジタル教科書を使用することによるメリットにはどのようなことが想定できるでしょうか。いくつか挙げてみます。

 

学習障害のある生徒への活用

閣議決定された内容によると、学習障害のある生徒、視覚障害のある生徒に関しては全ての教科においてデジタル教科書の使用が認められることになりました。文字の拡大やテキスト色の変更、音声での読み上げなど従来の教科書ではできなかったケアが可能となります。

 

ディープラーニングへの活用

デジタル教科書の導入が進むことにより教育現場、授業のあり方に大きな変化が訪れる可能性があります。現行の教師から生徒への情報伝達型の授業方法ではなく、生徒が主体的に学び(ディープラーニング)教師がサポートを行う双方向型の授業への移行です。ディープラーニングの導入は文部科学省が新学習指導要領でも推奨されています。一般社団法人デジタル教科書教材協議会の資料の中にデジタル教科書の機能についての解説があります。

 

 

引用:文部科学省「学びのイノベーション事業実証研究報告書」

 

デジタル教科書には動画の再生や正答比較機能などの導入も見込まれており、生徒が自ら学習を自分のペースで進めることができる環境が整備されています。

 

通学時の生徒にかかる負担の軽減

朝日新聞デジタルの記事によりますと小学校低学年の生徒の通学時のランドセル及びサブバックの平均重量は7.7キログラム、最高で9.7キログラムだったという調査結果があります。低学年時の体重はおよそ20キロから30キロ程度と考えるとかなりの比率の荷物を通学時に運んでいることになります。教科書に加えプリントや宿題のファイルなど紙の媒体が教育現場では当たり前に使われていますが、ビジネスの世界ではだいぶ前からペーパーレスが進んでいます。デジタル教科書の導入によって、学習効果以外の部分でも生徒の負担を軽減することができることでしょう。

 

指導者用デジタル教科書の導入状況

生徒側だけでなく指導者用のデジタル教材の導入も進んでいます。文部科学省によりますと平成25年度時点で指導者用のデジタル教科書の導入状況は中学校で42.4%、小学校では42.2%と半数近い導入が進んでいるとされています。

 

 

教科別では数学、英語などの導入が進んでおり国語、社会系が続いています。英語などは発音やリスニング、ヒアリングの部分で効果を発揮しいています。

 

 

引用:文部科学省 一般社団法人教科書協会 情報化専門委員会 「「デジタル教科書」の現状と課題」平成27年6月30日

 

指導者の導入実感

デジタル教科書を導入した教師側の感想も文部科学省の資料に掲載されています。それによると概ね教師側の使用感想も好意的で、特に以下のような項目が挙げられています。

1 わかりやすい授業ができる
・ 学習情報の共有化(教師の指示や各児童の考えがわかる)・ 話し合い活動の活性化
・ 選択、拡大、書き込みによる学習内容の焦点化・ 視覚化、音声化による理解の深まり、広がり⇒特に低位層児童の学力向上に効果あり
2 自由度の高い授業ができる
・ 教科書を文や問題、絵、写真、図表に分けて活用できる ・ 学年や教科を越えた学習が可能に(学びを縦・横に広げる)⇒学習材としての教科書の活用が促進
3 授業準備の効率化ができる

引用:文部科学省「学びのイノベーション事業実証研究報告書」

 

通常の教科書は学年ごとに学ぶ範囲が決められており、関連する内容でも学年をまたぎ複数回学ぶ方法が現行実施されていますが、デジタル教科書を使うことで関連項目を深ぼって調べることができ、学年や教材、教科も超えた学習が可能になったとの感想も上がっています。

 

デジタル教科書導入の懸念点

 

デジタル教科書の導入にはメリットが多く見受けられますが、懸念点、課題がないわけではありません。まず、多くのデジタル学習がそうであるように、指導する側の理解や、生徒の能力格差が懸念されています。学習の仕組みへの理解が早く、能動的に学習できる生徒に対しては大いにプラスに働く可能性を感じさせるアクティブラーニング、ディープラーニングですが、受動的になりがちな生徒に対してどのように学習を促すかは、教師、生徒両方にとって大きな課題となります。導入事例の共有や、教師側のスキルを高める仕組み作りも各地で検討されています。

 

まとめ

デジタル教科書のメリットや導入実績などご紹介いたしました。デジタル教科書は生徒の主体的な学習意欲を推進し、より深い学びに繋がる可能性のある教材です。導入に向けて指導者側の理解や活用方法、学校全体で共通のスキームをいかに作っていくかがポイントでしょう。

 

■参考
文部科学省「学校教育法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」
一般社団法人デジタル教科書教材協議会

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部