キャリア教育コラム

【基礎編】キャリア教育とは?キャリア教育の3つの事例と国の取り組み

更新日:2018/03/11

近年キャリア教育の推進が求められていますが、実践として現場へ導入することに苦労されているのではないでしょうか。キャリア教育をすすめる第一歩として、まずは教育内容の理解から始めてみてはいかがでしょうか。ここではキャリア教育の内容、実践事例、キャリア教育に求められていることをわかりやすく解説します。

 

キャリア教育とは

 

1.キャリア教育とは?

2〜3年程前から教育現場ではしばしば「キャリア教育」という言葉を耳にします。これまでは国語、数学、英語、理科、社会などの学力向上を目的とした教育指導へ力を入れることが重要視されてきましたが、最近では職業観の育成を軸とした「キャリア教育の強化」が教育現場で求められるようになってきました。

ではそもそも「キャリア教育」とはどのような教育なのでしょうか。キャリア教育の始まりは1970年代初頭のアメリカで当時の米国連邦教育長官マーランドが説いたcareer educationであると言われています。日本では1999年に政策として進められることになり、「職業観と勤労観を養い、職業に関する知識と技能を身につけること」そして「自分の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」としてキャリア教育がスタートしました。そして2011年の中央教育審議会ではキャリア教育のあり方を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通してキャリア発達を促す教育」であると定義しました。

 

 

 

 

キャリア教育は小学校から始まり、中学校、高校と成長していく過程で、発達の段階に合わせて実施されていきます。具体的な教育内容としては社会見学、ボランティア活動、職場体験、インターンシップなど、また学生自らオリジナル商品の開発や販売などを手がけることもあり、一般企業での就労体験のみならず、自ら仕事を生み出し職業観を学ぶという取り組みもあります。そしてキャリア教育を通して「働くこと」と「専門知識・技能を得ること」の重要性を生徒に理解させることを狙いとしています。

2.なぜキャリア教育が必要とされるのか?

ではなぜ教育現場でキャリア教育が必要とされているのでしょうか。どうして働くことの重要性を教育しなければならないのでしょうか。

キャリア教育の必要性が訴えられている背景には、日本の社会構造の変化が関係しています。少子高齢化、終身雇用制度の崩壊、グローバル化、財政状況の深刻化などにより若者の就職・就業環境に大きな変化が生じてきています。そしてこの社会の大きな変化に合わせて生きていくためには、これまでのような「上級学校への出口指導」に始終しているだけでは太刀打ちできません。日本社会の大きな転換期を乗り越えるためにキャリア教育は必要とされているのです。

3.キャリア教育をすすめる背景

キャリア教育が必要とされているのは日本の社会構造の変化(少子高齢化や終身雇用制度崩壊など)が関係していると前項で述べましたが、ここでは国をあげてキャリア教育をすすめている背景について詳しく説明します。

日本の社会環境が大きく変化したことにより、若者の社会人・職業人としての資質や素養が欠如し、精神的・社会的な自立が遅れていることが明らかとなり社会の問題となっています。具体的には、人間関係の構築が上手くできない、自ら意志決定できない、自己肯定感がなく自信が持てない、具体的な目的意識がなく進学し、就職しても長く続かないなどが指摘されています。そして若者のこういった自立の遅れがモラトリアムを強くしてしまい、フリーター、ニート、新卒者の早期離職の増加などの原因にもなっていると言われています。

 

不安定な若者

 

キャリア教育がすすめられている背景には、キャリア教育を通して日本の若者の精神的・社会的自立を促し、文部科学省が新しい学習指導要領の考え方でも推奨している「様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどの ように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、 課題を解決していくための力」である「生きる力」を持った若者の育成が急務という国の課題があります。

4.キャリア教育の3つの実践例

キャリア教育が推奨されている中で、実際の教育現場ではどのような取り組みがされているのでしょうか。学校や様々な機関が協力して行っている3つの実践例を紹介します。

 

・科学わくわくプロジェクト

(公式HP: http://www.wkpro.jp/index.html
小中高生を対象に科学技術の振興を行なっている公益財団法人マツダ財団と広島大学が2003年から共同で開催しているプロジェクトです。このプロジェクトは子どもたちが将来科学に興味を持ち、科学の楽しさを学び、科学者・技術者になる志を持つこと、科学・技術を大切にする地域風土づくりに貢献することを目的とし、「サイエンスレクチャー」という科学に関連する様々な体験授業の実施や、「広島大学科学塾」という広島大学内の施設を活用した科学実験の体験授業などが開催されています。

 

・石川県人材確保・定住推進機構(ジョブカフェ石川)

(公式HP:http://www.jobcafe-ishikawa.jp
石川県内の中学生・高校生の職業意識啓発とキャリア教育支援を行なっている団体です。活動の一例として、石川県内で働きたいと考えている高校生を対象に県内企業の紹介の場として約190社の企業ブースを設け、高校生やその保護者が企業の会社説明を受けられる合同企業説明会を企画しています。2017年7月に開催されたこのイベントには高校3年生の生徒と保護者が約1,900名参加しています。またその他にもキャリア教育の出張講座や就職対策講座の実施、県内企業へのインターンシップ実施などを行っています。

 

・関西キャリア教育支援協議会

(公式HP:http://www.career-kansai.jp
子どもたちのリアルな職業観、意欲ややる気、主体性・自立性を育成するため、教育界だけでなく産業界、労働界もともに支援を行うという目的で発足したこの団体は、大阪商工会議所や日本労働組合総連合会大阪府連合会などが大阪府教育委員会と大阪市教育員会と連携して設立されました。
主な活動内容は「情熱教室」とよばれる、小中高校の教育現場への社会人講師の派遣、職場見学、職場体験、工場見学の受け入れ施設の紹介などがあります。

 

上にあげた3つのどの実践現場でも、共通しているのは子どもたちの興味関心を引き出し、職業意識を高めることに力を入れている点が共通しているところではないでしょうか。

5.経済産業省が実施するキャリア教育への2つの取り組み

キャリア教育は文部科学省が音頭を取って推進していますが、経済産業省でも子どもや若者に対して職業観の育成や、実社会と学校の授業との繋がりを伝えるキャリア教育に力を入れ取り組む企業などの活動に対して2010年より「キャリア教育アワード」と「キャリア教育推進連携表彰」という2つの表彰制度を設け、対象の選出、表彰を行っています。

 

表彰

 

「キャリア教育アワード」は企業や経済団体などによる教育支援の取り組みを奨励・普及するための表彰制度です。一方、「キャリア教育推進連携表彰」は学校を中心としたキャリア教育の促進に向けて教育関係者、行政、NPO、産業界などが連携・協働して行う取り組みに対して奨励・普及するための表彰制度となります。どちらもキャリア教育へ尽力した組織や団体へ贈られるもので、キャリア教育のさらなる促進を目的に実施されています。

6.キャリア教育を考える上でのキーワード

キャリア教育をすすめる上で下記2つの実践的教育法が注目されています。ここではキーワードとその簡単な概要を紹介します。

 

・アクティブ・ラーニング

教員の一方的な講義形式の授業ではなく、生徒が能動的に学習する教育法のことです。具体的にはグループディスカッション、ディベート、グループワークなどを通して認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験などの育成を図っていく手法です。

 

 

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・PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)

別名「課題解決型学習」とも呼ばれ、知識の暗記のような受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法です。生徒自身の自発性、関心、能動性を引き出し、自ら学び努力することの価値を評価することに重点を置いています。また正しい答えにたどり着くことが重要ではなく、答えにたどり着くまでのプロセスが大切であるという学習理論で、アクティブ・ラーニングの一環として扱われています。

 

 

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7.まとめ

少子化や終身雇用制度の崩壊といった、日本の社会構造の変化により若者の精神的・社会的自立の遅れが問題となっている昨今、キャリア教育の必要性と役割が今一度見直され、再注目されています。

日本のキャリア教育が本格的に進められたのは今から19年前の1999年、当時は職業観の育成を中心としたキャリア教育が主流でしたが、今日のキャリア教育ではアクティブ・ラーニングやPBLが取り入れられ、コミュニケーション力や問題解決能力の育成も重要視されています。時代の移り変わりと共に社会で求められ、生き抜くために必要な力も変化していきます。これらかの日本はもちろん世界に必要とされている生きる力を、キャリア教育を通して子どもたちに学んでもらいってもらえればと思います。

 

■参考
経済産業省 『キャリア教育』『キャリア教育アワード・キャリア教育推進連携表彰
文部科学省『新しい学習指導要領の考え方
大学新聞社発行『進路アドバイザーのための基礎知識2017』

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部