キャリア教育コラム

0から理解!アクティブラーニング総まとめ

更新日:2018/09/10

現在、文部科学省は学校教育にアクティブラーニングを積極的に導入するよう推進しています。しかし、教育の現場ではアクティブラーニングが具体的にどのような内容か、授業としてどのように取り入れていけばよいのか難しく感じてしまい、思うように実践できていないのが現状ではないでしょうか。まずは授業に取り入れるハードルを下げるために、アクティブラーニングについて正しく理解することから始めてみませんか。

アクティブラーニングとは

教員から学生への一方通行な講義形式の授業に対し、アクティブラーニングは学生が能動的に考え学ぶ教育法を指します。アクティブラーニングでは、グループディスカッション・ディベート・グループワークなどを通して認知的能力・倫理的能力・社会的能力などの育成を図ります。正しい知識の記憶による修得ではなく、正解のない議論(課題)を通して問題解決へのアプローチ方法を身につけることが、アクティブラーニングの最大の特徴と言えます。

アクティブラーニングにおける教員の役割は、正解・解答のある課題を教えることではありません。教員に求められる役割は講師(レクチャー)ではなく進行役(ファシリテーター)であり、中立的な立場で議論の進行をサポートすることが期待されます。

文部科学省がアクティブラーニングを推進する理由

昨今の価値観の多様化やテクノロジー分野の発展に合わせて、多様な社会に合った人やモノが求められるようになりました。時代の変化に人間が遅れをとることがないよう、教育分野でも変化の必要性が問われています。この変化に適応するためには、学習内容はもちろん学習方法も従来と違うアプローチをしなければなりません。文部科学省では、これからの時代に合った教育・学習方法としてアクティブラーニングを推進しています。

前項で触れた通りアクティブラーニングは認知的能力・倫理的能力・社会的能力などを養う学習方法であり、自ら主体的に行動し考える力を身につけるのに役立ちます。アクティブラーニングによって学ぶことで、多数の価値観に耳を傾けて相手の考えを認め、尊重する姿勢を学ぶこともできます。

ラーニングピラミッド

※図は京橋で作成した画像に差し替え

アメリカ国立訓練研究所が発表したラーニングピラミッドは、学習方法と平均学習定着率の関係を表した図です。この図によると、アクティブラーニングで行うグループ討論、体験、他人へ教える学習方法は、旧来の講義や読書、視聴覚より定着率が高いことがわかります。
講義への出席や勉強内容に関する読書などの学習方法はどちらかと言えば受動的で孤独な学習方法であり、学んだ内容があまり脳に定着しません。一方、ピラミッド下部にはディスカッションやフィールドワークなどの学習方法が当てはまります。これらは能動的かつ他者との関わりが重要となる学習方法であり、意欲を持って学びに関わることで学んだ内容が脳に定着しやすくなります。

アクティブラーニングで得られる効果

アクティブラーニングを通して、従来型授業ではなかなか得られない以下のようなメリットを得ることができるでしょう。

導入目的その1「知識の伝達と定着」

ディスカッションやフィールドワークなどの活動においては、仲間と協力して知識を交換・共有することが大切です。同時に、ディスカッション内での発言やフィールドワーク後の集団発表といった学びのアウトプットも重視されます。こうした学習方法において学びの質を上げるには、学ぶべき課題について学生一人ひとりがしっかり理解を深めることが重要です。

自分にとって重要な物事や興味がある物事は、さほど苦労しなくてもすんなり覚えられるものです。特定の課題に対して何度も反復して関わることで課題への興味もおのずと高まり、学んだ内容を脳に定着させやすくなるでしょう。

導入目的その2「問題解決能力の育成

教員から一方向的に伝えられた暗記・公式などの知識が重視される従来型学習に対し、アクティブラーニングでは決まった答えがない課題に学生自らが主体的に取り組む場面が多くなります。

アクティブラーニングでは「この問題についてどう思うか、問題を解決するには何をすべきか」といった命題について学生一人ひとりが熟考するとともに、他者との意見交換を通して価値観の多様性を学びます。他者との意見交換と自らの知識の整理を繰り返すうちに、全く新しい解決法が見つかることもあります。

大学教育におけるアクティブラーニング

大学のアクティブラーニングでは、大学側の一方的な教育ではなく教員と学生が一体となって授業を展開し、共に学ぶ姿勢が重視されます。ここでは3つの大学の事例を紹介します。各大学のアクティブラーニングに対する学生の満足度は高く、また年を追うごとに授業内容が改善され学びの質も高まっています。

金沢工業大学 工学部

金沢工業大学工学部では「自ら考え行動する技術者」をモットーに、知識を知恵に転換する力を得るためのカリキュラムが組まれています。「プロジェクトデザイン教育」を重視した技術者教育プログラムと「『総合力』ラーニング型授業」に基づいた総合力養成プログラムの2本柱をメインに、特色あるアクティブラーニングを取り入れています。

1つ目の柱「プロジェクトデザイン教育」を重視した授業では、技術者が実社会で経験する課題の発見、問題の明確化、解決策の創出、評価・選定、設計の具体化という問題解決の過程を身につけることができます。授業はグループワーク形式で以下のような手順で行われ、教員はプロジェクトデザインを行う過程・手法を解説しつつ適宜学生の相談に乗るコーチ役に専念します。

①解決策が一つではない問題に挑戦し、試行錯誤を繰り返しながら解決策を探る。
②解決策を見つける途中にクラス内でプレゼンテーションを行い、他チームの意見を自分たちの活動に取り込んでいく。
③チーム活動を通して、チーム内での個人の責任や他人との協調の重要性を知る。

2つ目の柱「『総合力』ラーニング型授業」を重視した授業は、社会で求められるコミュニケーション力、協働する力、学習態度・意欲などの育成を目的として行われます。学生が能動的に学ぶアクティブラーニング型授業を通して効率よく総合力が身につくと考えられ、一般教養の授業にもアクティブラーニングが導入されています。例えば、一般教養「日本学」の授業では、日本に関するテーマについてグループ討議や課題学習、結果発表を行います。学生は、以下の学習手順を繰り返すことで総合力を向上させていきます。

①知識を取り込むこと
②思考・推論・創造すること
③チームとしてコラボレーションしリーダーシップを発揮すること
④発表・表現・伝達すること

岡山大学 工学部 機械工学科

岡山大学工学部では、大学1年次~大学院修士課程までの各学年にアクティブラーニングを導入しています。以下は、カリキュラムの一例です。
①1年次「機械工学ガイダンス」でグループワークを通して大学での勉強法、プレゼンテーション、情報検索の方法を学ぶ。
②2年次「創成プロジェクト」で発想力と創造力を養う。
③3年次「創造工学実験」で測定する対象を学生自ら探し、選び実験を行う。(測定装置の使用方法は教員が教える)

2年次の創成プロジェクトに導入されている振り返りシートには、担当教員による評価結果記入欄が設けられています。評価欄は個人評価欄とグループ評価欄に分かれており、例えば個人評価項目としてリーダーシップ・課題探求力・チームワーク・実務能力・創成能力の5種類が設定されています。

この振り返りシートは創成プロジェクトの授業内で3回記入することになっており、授業期間中に教員と学生の間で3往復することになります。学生は、このやり取りを通じて自分の成長を確認しながら授業に取り組むことができます。

産業能率大学 経営学部

産業能率大学では講義とアクティブラーニングは代替関係ではなく補完関係にあるとみなし、専門教育科目・実務教育科目・キャリアデザイン科目・基礎教育科目の4科目群すべてにアクティブラーニングを導入しています。たとえば、キャリアデザイン科目では大学1年~4年次を通して以下のようなカリキュラムが組まれています。アクティブラーニングとキャリア教育を組み合わせることで、社会に役立つ大学教育を実践できることがわかります。

①1年次では「働くこと」と「企業の仕組み」についての講義受講、職業適性検査の実施、キャリアプランシートの作成を行う。これらのステップを通して大学4年間ですべきことを明確化させる。
②2年次では「キャリア設計と自己開発」の授業で業界と職種について講義を受け、4名程度のグループでそれぞれの職種に必要な知識・技能などを話し合って発表する。
③3年次、4年次には専門ゼミでキャリア教育を担い、自己PRの作成、模擬面接練習、就職内定先企業・業界研究のレポートまとめなどを行い、学生自身のキャリア形成意識を高めていく。

高校教育におけるアクティブラーニング

高校教育はさまざまな学びを通して知識を深めつつ自身の進路を現実的に考え、社会・職業への移行を準備する時期に相当します。アクティブラーニングを通して自己理解を深めるとともに自身の将来・進路について現実的に吟味し、さまざまな課題に意欲的に挑戦する能力の習得が重視されています。未知の物事に関心を持ちさまざまな変化に対応するための「生きる力」を得るため、高校教育において以下のようなキャリア教育プログラムが実施されています。

ワークショップ形式

ワークショップは、参加者が自発的に作業または発言できる環境を整え、進行役(ファシリテーター)を中心に参加者全員が体験するものとして運営される学び・創造・トレーニングの形式です。ワークショップ形式の場では通常のスクール形式の場より活発に意見を交わすことができ、参加者一人ひとりが自ら考え体験することでより理解を深めることが期待できます。

【導入例】
・日常生活のことや進路・悩みなどに関する質問を通して好きなことや嫌いなことを自ら言語化し、自己理解を促す。
・業界研究や企業のバリューチェーン理解など、仕事や職業の理解を促す。
・働き方や収入に関する仮想体験を通じて人生設計の大切さを説き、就労観・職業観の醸成を促す。

出張授業形式

進路選択をしてきた先輩や第一線で活躍している社会人などを講師として招き、授業を進めてもらう形式です。ただ知識を学んで終わりでなく実際に経験した人に体験的に語ってもらうことで、よりわかりやすく具体的な行動を促すことが期待できます。

職業体験・校外学習形式

職場体験インターンシップ、大学・オフィスの見学会、企業などでのワークショップ、地域の課題解決のプロジェクトなど、学校では体験できない経験を校外で実施する学習形式です。ただ話を聞くだけでなく直接目で見て感じとることが可能で、より深い理解に繋がると同時に社会との接点も持つことができます。学内に留まらない同世代の仲間を得て、互いに刺激を与えあうこともできます。

異文化交流形式

生徒のキャリア形成の可能性を広げ将来の選択肢を増やすために、グローバル人材の育成を行います。例えば、日常の学びの中で外国語をコミュニケーションツールとして用います。また海外留学生の受け入れや在学中の海外留学によって国籍・文化・慣習が異なる相手との違いを当たり前に捉え、相互理解しようとする姿勢を育てることで国際人としての意識を身につけます。

【導入例】
・海外留学生人のホームステイ受入れ。
・外国語を活用したプレゼンテーションや演劇、歌の披露。

実践教育形式

職業体験ではなくビジネスそのものを行うことで自主性を育み、これからの社会を生き抜くために必要なビジネスマナーや情報処理力などを育てます。教えるのではなく自ら直面し考えることで、社会に出てから必要なスキルを必然的に学べるようになります。

アクティブラーニングの問題点

各教育機関でアクティブラーニングの導入が進められると同時に、アクティブラーニングが持つさまざまな問題・課題も明らかになっています。

指導の難しさ

ひとくちにアクティブラーニングといってもThink-Pair-Share、ピア・レスポンス、ジグソー法などさまざまなグループ技法があり、どの課題に対してどの技法を選択すべきか分かりにくいという声が挙がっています。またグループワークやディベートといった学生同士の活動を苦手とする学生への指導が難しく、どこまで学生の自主性を重んじどのようにアドバイスすべきか教員が判断に迷うケースも多々あります。このように、学生側の問題だけでなく教員のファシリテーション能力の向上も大きな課題となっています。

学習時間が限られている

複数人でワークや職業訓練などを行うことが多いアクティブラーニングは、実施に時間がかかりすぎることがあります。学校ではこれらの活動に加えて通常の授業も行わなければならず、時間が足りなくなってしまいます。さらに教員の立場から見ると、従来のように「正解を教えて終わり」ではなく学生自らが答えを見つけるための手助けをしなければなりません。こうした理由から、アクティブラーニングには従来型授業よりも多くの時間がかかる傾向があります。

何を軸に評価するのか分からない

従来型の授業では、おもに提出課題・定期テスト・出席回数などで評価が決まります。しかしアクティブラーニングでは、授業中の姿勢も評価する場合とテストの結果のみで評価する場合があります。アクティブラーニングをより活発に行うためには前者が有効ですが、対話が苦手な学生は評価が下がる恐れがあります。一方後者では、授業に積極的に参加しない学生が現れるかもしれません。

また対話を通して学生同士の意見が衝突するケースもあり、気心の知れた相手以外との対話を苦手とする学生も多いです。そうした学生の場合、アクティブラーニングの成績を思うように上げられないかもしれません。

適切な指導方法、課題(教材)の選択が難しい

アクティブラーニングに対する教員側の理解度が低いと、学生に書く・話す・発表するなどの活動をさせれば十分と解釈し学習内容を充分吟味しないまま授業を進めてしまう恐れがあります。形式的で質の低いアクティブラーニングは、全く意味のない学びに終わってしまうでしょう。

また、アクティブラーニングはワークショップ形式のものが多いです。教員が事前に研修・体験を行うなどして十分な予備知識を身につけていないと、本当に効果的な指導ができたかどうか判断しづらくなってしまいます。こうした課題選択の難しさも、アクティブラーニングの課題のひとつです。

アクティブラーニングを円滑に活用するためには

アクティブラーニングを学習に取り入れ成功させるためには、さまざまな成功例はもちろん失敗例からも学ぶべきことがたくさんあります。文部科学省が発表した「アクティブラーニング失敗事例ハンドブック」では、以下のような事例が紹介されています。

・学習への関わり方について、意欲が高い学生とそうでない学生の差が激しい。
・リーダー役がおらず、グループがまとまらない。
・具体的な評価方法が分かりにくく、学生・教師ともに混乱してしまった。
・教員が指示を出しすぎて、学生が指示待ち状態になってしまった。

こうした問題を解決するには事前にオリエンテーションなどの機会を設けて評価基準を明確にする、学生の意欲を高める仕掛けを作るなどの工夫が有効です。アクティブラーニングでは学生の主体性が重んじられますが、必要に応じてグループ内での役割決定や目標設定などを教員がサポートすることも重要です。

アクティブラーニングに関する正しい知識を得ることが、成功の第一歩

昨今の急激な情報化や価値観の多様化に対応し社会で活躍する人材を育てるため、教育方法が大きく見直されています。文部科学省で推奨されているアクティブラーニングは、学習者一人ひとりの学びへの意欲を高めてチームワーク力や問題解決能力などを総合的に身につける学習方法です。教員から学生への一方向的な知識の受け渡しがメインとなる従来型の授業に対し、アクティブラーニングではディスカッションやフィールドワークのように学生が主体となる学びが重視されます。

すでに多くの教育機関で導入されているアクティブラーニングですが、メリットだけでなくデメリットも指摘されています。流行だからと安易に導入する前にまずアクティブラーニングの意義を十分理解し、数々の成功例・失敗例から学ぶことが重要です。表面的な授業の進め方ばかりにとらわれずアクティブラーニングの本質を理解したうえで取り組むことで、より良い結果を残すことができるでしょう。

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部