キャリア教育コラム

アクティブラーニングへの批判とは?教育現場で気をつけたいポイント

更新日:2018/08/08

生徒たちの能動的な学習を促す「アクティブラーニング」が教育の現場で取り入れられるようになり、だんだんと浸透してきているのはご存知かと思います。おさらいとして、「アクティブラーニング」とは生徒が能動的に学ぶことによって”認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る”(文部科学省2012年8月中央教育審議会答申)ことを目標とした学習方法です。実際にはどのような方法で授業に取り入れられているかというと、通常の授業のように教師が教壇に立ち、説明する内容を生徒たちが受動的に聞いている従来の授業方法ではなく、生徒たち自身による体験学習や教室内でのグループディスカッションやグループワークを基本に授業を行うスタイルです。

アクティブラーニングには生徒の学習に対する姿勢がより積極的になるという効果も認められており、さまざまな方法で学習に取り入れられていますが、一方でアクティブラーニングに対する否定的な意見も聞こえてきています。アクティブラーニングにいまどのような批判が寄せられているのか、教育現場でどのようなことに気をつければよいのかみていきましょう。

どのような批判があがっているのか

アクティブラーニングに対して具体的にどのような批判があげられているのか、法政大学の佐貫浩教授の研究ノート「『アクティブ・ラーニング』の批判的検討 ――真にアクティブでディープな学びの条件を考える――」を参考にみていきましょう。

 

生徒にとって本当に良い学習方法なのか

まず、アクティブラーニングはより良い学習のために考案された手法です。しかし、アクティブラーニングという学習方法に注力するあまり、

”アクティブさを測る基準が、挙手、発言というような「形式」におかれ、そういう「態度」を取らせることが、アクティブ・ラーニングであるかの「誤解」に近い混乱が起こっている。”

とある通り、本質から離れて、形式で生徒の評価をしてしまう問題が起こっています。
また、

”アクティブな学びを妨げている原因である、勉強嫌いや学習意欲の欠落という根本が改善されないままに積極的に授業に参加するという態度だけを作り出そうとしているようで、効果が疑わしい。…評価で持って「アクティブさ」を演じるように仕組む指導が、アクティブ・ラーニングの手法であるかに展開している。”

とあり、こちらもアクティブラーニングの問題点として書かれています。

他にも、専用の教材の開発や、現在の教科書はアクティブな学びに即して作られているのか、憲法問題や歴史論争などセンシティブな問題をテーマにして議論を深めることができにくい環境が出来上がっているのではないか、など、現在のアクティブラーニングの手法について批判や疑問などがあげられています。また受験については偏差値重視のため、暗記詰め込み型の授業を展開しなければならないという日本の学習方法に対する考え方や文化に根ざす問題もあげられています。

 

アクティブラーニングを見つめ直す必要がある

アクティブラーニングは教育に関わる人、そして子供達自身にとって重要な目標であるとしています。しかし、文部科学省の中教審答申ではトピックとして取り上げられていた「アクティブラーニング」が、新学習指導要領では文言が使われておらず、「主体的・対話的で深い学び」という言葉に置き換えられました。そのことから、教育行政は「アクティブラーニング」から次第に遠ざかっているのではないかという指摘もあります。

アクティブな学習や学びをより活かすためには、

”子供の思考の自由や教師の自由な授業研究、教材開発と自主編成などを引き出さざるを得ない。”
”しかし、私たちには、より根本的な視点から、アクティブな学習、ディープな学びとは何かを、探究する課題が課せられている。それは日本の教育改革にとっての避けられない課題である”

とあり、教育行政のサポートが必要であることが書かれています。

中央教育審議会が推奨しているのはアクティブラーニングの「視点」?

教育の現場ではアクティブラーニングに対して批判や疑問点が出てきていますが、日本の教育の基本方針を作成している文部科学省の中央教育審議会は、どのようなアクティブラーニングを奨励しているのでしょうか。平成28年8月1日に出された中央教育審議会 教育課程企画特別部会の資料「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)のポイント」から探ってみましょう。

 

「主体的・対話的で深い学び」

「アクティブラーニング」が「主体的・対話的で深い学び」という言葉に置き換えられたという点ですが、資料では次のようにポイントをまとめています。

学習内容を深く理解し、社会や生活で活用出来るようにするためには、知識の量や質と思考力の両方が重要。学習内容の削減は行わず、「アクティブ・ ラーニング」の視点から学習過程質的に改善することを目指す。知識重視 か思考力重視かという二項対立的な議論に終止符。
「アクティブ・ラーニング」の視点は、学校における質の高い学びを実現し、子供たちが学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたってアクティブに学び続けるようにするためのもの。「学び」の本質として重要となる「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指す授業改善の視点が、 「アクティブ・ラーニング」の視点。
1. 学ぶ意味と自分の人生や社会の在り方を主体的に結びつけていく「主体的な学び」
2. 多様な人との対話や先人の考え方(書物等)で考えを広げる「対話的な学び」
3.各教科等で習得した知識や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせて、学習対象と深く関わり、問題を発見・解決したり、自己の考えを形成し表したり、思いを基に構想・創造したりする「深い学び」

 

教育現場に向けての改善方針

日本の学校教育の全体的な教育の方針について改善点が書かれています。特にアクティブラーニングの視点に絞って改善点を見てみましょう。

学習過程を質的に改善し、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために必要な授業改善の視点(「アクティブ・ラーニングの視点」)を教科等を越えて共有。あわせて、各教科等の特質応じた「主体的・対話的で深い学び」について考え方を整理し、指導事例集の作成等に反映。
また、各教科等における学習対象を捉える視点や考え方を「見方・考え方」として整理(「言葉による見方・考え方」、「数学的な見方・考え方」など)。 指導内容と「見方・考え方」を関係付けて示していくことで、子供たちが学習対象と深く関わり、理解の質を高めていけるよう、教材や指導方法に反映。

答申には実際に生徒と関わる教育関係者に向けて、アクティブラーニングの視点を使ってより生徒に授業内容に興味を持って自主的・積極的に理解を深めていけるよう方向性が示されています。
また、教科の垣根を超えて情報を共有することによって、「主体的・対話的で深い学び」につながる指導事例集も作成することが示されています。

教育は人材育成

アクティブラーニングが教育機関で取り入れられ、ある程度定着したからこそ、多く事例ができ、批判や改善の必要性などが認知されるようになりました。現場の声に応じて教育行政もアクティブラーニングについて、指導要領に改定を加えています。いままで通り暗記型知識重視か、もしくはアクティブラーニングを用いた思考力重視かという二極化を避け、知識重視と思考力重視を教育現場の環境や指導を行う教育関係者、そして一人ひとりの生徒に合わせ採用し、自主的・積極的に学習に取り組める思考を育てることがポイントとなります。

また、アクティブラーニングは現在も進歩を続ける学習方法の一つです。新しいことを始める場合は指導する立場である教育関係者も初心者ですので、戸惑うことや方向性がずれてしまうこともあるでしょう。そういった場合の軌道修正の方法のレクチャーやアクティブラーニング自体へ理解を深めてもらうための手助けも必要となるでしょう。教育の目的は人材を育成することにあります。教育方法に振り回されず、目的を忘れないように心がけることが重要になります。

■参考:
文部科学省
資料2教育課程企画特別部会 論点整理(案)補足資料(4)

・平成28年8月26日教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめについて(報告)

・平成28 年8月1日(月) 中 央 教 育 審 議 会 教育課程企画特別部会 資料1「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)のポイント

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部