キャリア教育コラム

アクティブラーニングはなぜ必要なのか?導入する目的と得られる効果は?

更新日:2018/07/11

近年国内の多くの教育現場で「アクティブラーニング」に着目した学習法が導入されており、文科省でもアクティブラーニングを活用した授業の実施を推奨しています。

 

アクティブラーニングを一言で説明すると「能動的・主体的に学習すること」であり、こうした考え方自体は特別新しいものではありませんが、近年アクティブラーニングが注目を浴びている理由とアクティブラーニング導入の目的・効果を考えます。

 

 

1.日本の教育現場におけるアクティブラーニングの概要

これまで日本の教育機関で採用されてきた多くのカリキュラムは、「きちんと講義に出席してノートをとること」「テストやレポートで多くの点数を取ること」などが重視されてきました。これらのカリキュラムは教師から生徒へ知識を与える一方向的なものであり、生徒の自主性や学習意欲を伸ばすのに必ずしも適しているわけではありません。そこで着目されたのが、主体的な学びを重視する「アクティブラーニング」です。

 

日本の教育現場において、アクティブラーニングは「考える力や社会的能力などを総合的に伸ばすため、生徒一人ひとりが能動的・主体的に学びに関わることを重視する学習法」と定義されています。日本に先駆けてアクティブラーニングを教育に取り入れたアメリカの現場でも、「受け身・消極的ではない学習」「生徒一人ひとりが積極的に聞く・読む・書く・振り返って考えることに取り組むこと」が重視されています

 

2.導入目的その1「知識の伝達と定着」

ラーニングピラミッド

 

上図の「ラーニングピラミッド」は、さまざまな学習方法とそれぞれの平均定着率(学習した内容がどれだけ身につくか)の関係を示したものです。

 

従来の教育現場で重視されてきた講義形式の授業や講義時間外の自主学習の多くは、ピラミッド上部の学習法に該当します。こうした学習法は教師から生徒への一方的な知識の流し込みに終わることが多く、また学習を通じて他者と協力・対話する機会も多くありません。その結果、多くの生徒はテストの点を取るためだけに孤独に勉強しなければならない状態に陥ります。

 

特に好きではない科目・苦手な科目の場合は「やらされている感」が強いため学習意欲が生まれにくく、何となく講義に出席したりちょっと練習問題を解いたりするだけになり、なかなか脳に定着しません。それどころか、ただ講義に出るだけで自主学習をまったくやらなければ、講義内容の約95%は忘れてしまいます。

 

少しでも自主学習の段階で定着率を上げたいと思うなら、ラーニングピラミッドの上から2番目、3番目に記載があるように、学習内容に関連した書籍を読んだり動画・音声(DVD・テレビ・ラジオ番組など)を視聴したりすることで効果が得られる可能性が少し高くなります。ただ、この段階でも定着率は35%に留まります。また、これらの学習方法は全て他者との関わりがほとんどなく、ひとりで学習をしているため、と集中力が続かないという問題もしばしば起こります。

 

一方、ピラミッド下部の「他者との議論」、「実践」、「他者に教える」などの学習法では、他者(ディスカッション・フィールドワークグループの仲間や発表・質問の聞き手など)との関わりが重要な要素となってきます。グループの仲間と協力し、学んだ内容を他者に伝えるためには、生徒一人ひとりの能動的かつ深い学習が欠かせません。いわゆる「一夜漬け」のような浅い準備しかしていないと質の良い発言・発表はできず、誰かに突っ込んだ質問をされるとすぐ答えに詰まってしまうでしょう。

 

さらにこれらの学習を繰り返し、深く学ぶことで自然に課題への興味・意欲が高まり、学んだことが身につきやすくなります。例えば、何度も聴いたことがある曲をいつの間にか好きになり、歌詞カードを見なくてもすらすら歌えるようになっているのに似ています。アクティブラーニングを導入する1つ目の目的と効果は、能動的な学習方法を導入することで、学習内容をより伝わりやすくし、知識の定着率を高めることだといえます。

 

3.導入目的その2「問題解決能力の育成」

従来型の学習法では、「794年に都が平安京に移った」「この問題は三平方の定理を使って解く」というように問題の回答や解き方そのものを覚えることが多くなっています。公式や年号をたくさん覚えてシンプルな練習問題を何度もこなせば、確かにテストの点を取りやすくなるでしょう。ただ、暗記に気をとられすぎて応用問題が解けなくなるケースも多く見られます。

 

一方アクティブラーニングを取り入れたカリキュラムでは、教師ではなく生徒が主体になって学習する機会が多くなります。アクティブラーニングで重視されるディスカッション、フィールドワークなどの学習法では「ファッションは自己表現の手段となり得るか?」、「地元の商店街を活性化させるにはどうすれば良いか?」というように決まった答えがない課題への取り組みが大部分を占めます。

 

その中ではまず「問題に対してどう思うか、なぜそう思うか」「この課題の問題点は何か、それを解決するにはどうすればいいか」というような命題を生徒一人ひとりがじっくり考え、対話によって他者と意見を交換し、さまざまな考え方があることを知ります。同じ意見の人と話をしていても、その結論に至るまでのプロセスが自分と違えば新しい発見があるかもしれません。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざが示すように、他者との意見交換と自分の知識の整理、アップデートを繰り返していく中で思いもよらなかった答えが得られることもあります。

 

現代社会では絶え間なく新しい情報・技術が生まれ、価値観も多様化しています。教育現場へのアクティブラーニングの導入は、新しい物事や他者の意見を積極的に取り入れる能力や周囲と協力しつつ柔軟に問題解決する能力を伸ばすのに有効です。こうした能力は、これからの社会において特に重視される能力といえるでしょう。

 

4.文科省も推奨するアクティブラーニング

 

文部科学省が作成した学習指導要領では、アクティブラーニングについて「めまぐるしく変化するこれからの時代、新しい社会のあり方を自ら創造するための資質・能力を総合的に伸ばす学びが必要」と言及しています。

 

そのためには学びの量だけでなく学びの質・深まりも重要であり、子どもたちが「何を学ぶか」だけでなく「どう学ぶか」にも注目する必要があります。「何を知っているか、何ができるか」「知っていること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」の3つの要素をバランスよく重視し、実社会・実生活と関わりが深い課題を通じて「子どもたちが自ら学びに向かい、学び続ける意志」を引き出し学びのエンジンとする努力が欠かせません。

 

しかし現在の日本の教育は、「教育の質を高め子どもたちの能力を伸ばすための取り組み」が狭い意味での授業の進め方や教師のスキルアップの追求ばかりに終わってしまい、本来の目的を見失うケースもあるのではないかという懸念も生じています。

 

5.「アクティブラーニングをやること」そのものが目的ではない

 

生徒一人ひとりの学習への意欲・柔軟な思考・問題解決能力を伸ばす学習法、言い換えれば「学ぶこと」そのもののスキルを身につける方法として、日本でもアクティブラーニングが注目されています。ただ、ディスカッションやフィールドワークなどの実践的な学習法を重視するアクティブラーニングは講義やテスト・自主学習をメインとする従来型カリキュラムの進め方とは大きく異なります。

 

そのため、アクティブラーニングを導入した教育機関の中でもアクティブラーニングのためのカリキュラム作りや教員研修ばかりに力を注いでいるケースが少なくないという指摘があります。また、従来型カリキュラムに慣れた教師にとってアクティブラーニングが負担になりやすいことも事実です。しかし、アクティブラーニングはあくまでも生徒の能力を最大限に伸ばすための手段のひとつであり、アクティブラーニングを実施することそのものが目的ではありません。

 

話題になっているからと言ってむやみにアクティブラーニングを取り入れるのではなく、なぜアクティブラーニングを導入したいのか、アクティブラーニングを導入することで生徒の能力をどう伸ばしたいかという本質にしっかり着目することが大切です。

 

 

■参考

私立短大教務担当者研修会 加藤かおり(新潟大学) 「アクティブラーニングとはその意義と実践

文部科学省 「2.新しい学習指導要領等が目指す姿

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部