キャリア教育コラム

アクティブラーニングで思考方法が変わる!教育方法としての取り組み

更新日:2018/07/11

最近教育の現場で「アクティブラーニング」という言葉が注目を集め始めています。日本では大学教育から広がり始め、近年では小中高等教育の現場でもアクティブラーニングという言葉が使われ始めています。アクティブラーニングとは何か、その方法や実例、失敗例も含めて見て行きましょう。

 

 

1.教育法としてのアクティブラーニングは既存の手法と何が違うのか?

 

早速アクティブラーニングとはどのような学習方法なのか見てみましょう。

 

今までの学校教育の手法は教師が教壇に立ち、生徒の前で教科書をもとに授業しながら板書などをして、生徒はその授業を聞きし板書をするものでした。この方法では生徒は授業を聞いているだけ、板書をするだけという受動的な学習方法でした。

 

一方、アクティブラーニングは言葉の通り、生徒が能動的(アクティブ)に学ぶことによって「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」(2012年8月中央教育審議会答申)学習方法です。

 

つまり今までの教師からの一方通行かつ暗記を中心とした授業でなく、アクティブラーニングは体験学習やグループディスカッション、グループワークなど社会人が仕事で実際に行うような手法を取り入れて、生徒自身が能動的、自発的に提示された問題に対して考え、意見を交換し、問題解決の手法を導き出していく学習方法を指します。

 

授業内容を覚え、それをテストなどでアウトプットする暗記型は、問いに回答する方法が生徒自身で考えたものではないため一時的なものになってしまいがちです。この方法では一旦暗記した回答への到達方法を忘れてしまうと答えにたどり着けないデメリットがあります。

 

一方、アクティブラーニングは生徒自身が能動的に体験や話し合いなどの中で学習する手法のため、体験を伴った知識として生徒の心に残り、回答への到達方法の一部を忘れてしまったとしても、経験が呼び水となり回答までたどり着ける可能性が増える学習方法です。

 

また、アクティブラーニングでは生徒は基本的に授業中は黙って聞いているだけ、板書をノートに写すだけではなく、お互いにコミュニケーションを取りながら学習するため、表現力や思考力、判断力も養われると言われています。

 

2.こんなにある!アクティブラーニングの手法

ここではアクティブラーニングのいろいろな手法について見ていきましょう。

 

アクティブラーニングは決まった手法があるわけではなく、生徒が「能動的に学習に取り組む」ことがキーワードになります。「能動的に学習に取り組む」とは具体的には、同じ授業を受けている生徒同士がコミュニケーションを取りながら学習をしたり、自分で何かを調べて発表をするというようなことで、ここでは代表的な手法をご紹介します。

 

Think-Pair-Share

この手法はまず、自分で課題について考え(Think)、隣の人と意見を交換し(Pair Share)、その意見をもとに全体で課題に取り組む方法です。課題に対する意見を自分で考え、その意見を交換し、話し合いを行うことで、表現力や理解力が深まります。

 

ラウンドロビン

こちらは、グループを作り、順番に課題について意見を述べていく方法です。Think-Pair-Shareが2人の意見を交換し、全体に対して発表するのに対して、「ラウンドロビン」は1人で全体に向けて意見を述べるので、プレゼンテーション能力の向上などが見込めます。

 

他にもアクティブラーニングの手法には「ジグソー法」や「ピアインストラクション」など他にも数多くありますが、重要なのは生徒が能動的に思考し、意見を交換し、コミュニケーションを取りながら課題に取り組むということです。

 

3.ICTを使ったアクティブラーニング

アクティブラーニングは情報通信技術(ICT)を利用することでさらに効果を発揮します。近年ではインターネット通信網の発達と一般化により授業でも取り入れる教育機関が多くなり、学校教育でICT学習を進める学校が急速に増えています。

 

ICTをアクティブラーニングに利用すれば、遠隔地の生徒同士が意見を交換したり、共に課題に取り組んだりということが容易になります。ICTにより時間と距離が縮まったおかげで、例えば生徒数が少ない学校の生徒でも多くの同年代の生徒とアクティブラーニングで学習することができる環境が整いました。

 

文部科学省でも「文教・科学技術施作の動向と展開」の中でICT活用の推進とアクティブラーニングを奨励しており、「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」で、今後教育現場でのICTの積極的な利用拡大を行うことで教育現場の改善を目標に掲げており、今後ICTを利用したアクティブラーニングは日本の教育現場で広く利用されることでしょう。

 

4.アクティブラーニングの導入事例

 

ここではアクティブラーニングが実際に利用された学習の例を見ていきましょう。

埼玉県教育委員会は平成22年度より「学びの改革」として、

 

生徒が潜在的に持っている「学ぶ力」を有効に引き出すことができる学び「協調学習」を取り入れた授業改善(「教え込みの授業」から「学び合いの授業」への「学びの改革」:主体的・対話的で深い学びの実現)に関する研究に取り組んでいる

 

とのことで、暗記型の学習からアクティブラーニング型の学習へ舵を切っています。

 

この「学びの改革」の概要には“生徒が主体的に学ぶ意欲をはぐくむ授業案等の研究・開発及び検証を行う。” ことや “ICTの効果的活用に関する研究を行う。” ことが盛り込まれており、積極的にアクティブラーニングを取り入れていることがわかります。

 

具体的な取り組みとしては「知識構成型ジグソー法」を導入し、「話す」、「聞く」、「考える」の一連の行動を繰り返し、課題に対する考え方や学び方自体を学習する方法の紹介と、授業の展開までが紹介されています。

 

・ジグソー法の流れ

 

まず生徒は課題に対して自分自身の現在の知識・経験から答えをまとめます。

 

その後、課題解決のヒントを与えられ、与えられたヒントが同じ生徒をグループとして「エキスパート活動」を行います。

 

エキスパート活動を経て生徒たちはヒント内容から課題についての理解を深めます。

 

次に違うヒントを持った生徒同士で新しいグループを作り、それぞれの意見をジグソーパズルのように組み合わせて当初の課題について回答を模索して行きます。

 

グループごとに導き出した答えを持ち寄ってグループ間で意見交換・情報共有をします。

 

最後にグループ活動を通して得た考えをもとに課題にもう一度向き合い一人で課題に対する答えをまとめます。

 

この方法から生徒は課題解決を通して、コミュニケーション能力や思考力、判断力などが養われ、この方法を「Saitamaモデル」として世界に発信していこうと考えています。

(引用:埼玉県 「学びの改革推進」)

 

5.アクティブラーニングの失敗理由

 

アクティブラーニングを行う上で、重要な点は生徒の能動的、自発的な課題への取り組みということが挙げられます。例えば、生徒が考えることを放棄して安易な回答に走ったり、グループ内で発言しなかったり、課題に対して無関心であったりするとこの学習方法は意味をなしません。

 

それと同時にアクティブラーニングで授業を行う教師側にも知識や生徒に対する理解が必要になります。

 

特に課題の回答に到達させるための先導者としての資質が大きく問われます。また、生徒が主体となって思考やグループ討論などを通して回答にたどり着くことが重要な点ですが、過剰に介入したり、また逆に手詰まりに陥っている生徒たちに全くヒントを出さないなどが無いように教師側が気を配る必要があります。生徒も教師も課題について能動的に取り組まなければ、メリットの多いアクティブラーニングも失敗に終わってしまいます。

 

6.まとめ

教育の現場で行われるアクティブラーニングは今までの暗記・詰め込み型の一方的で受動的な授業から、生徒自身が能動的に課題に取り組み、思考し、同じ課題に取り組む生徒とコミュニケーションを取り、意見を交換して自分たちで回答を導き出すという新しい学習方法です。

 

今後世界で活躍する人材を育成することを大きな目標の一つとしてアクティブラーニングが取り入れられています。これから日本を担って行くであろう子供達に覚えた知識で対処できない問題に直面したときに、課題解決の糸口を与えてくれるのが「考える力」、「問題を共有する力」、「共有された問題をみんなで解決する力」を与えてくれるのがアクティブラーニングです。知識の引き出しだけで課題に取り組むのではなく、コミュニケーションを通して課題に取り組むことで思考方法が今までと変わることでしょう。

 

 

■参考
文部科学省「文教・科学技術施作の動向と展開

教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)教育課程企画特別部会 論点整理(案)補足資料(4)

埼玉県「学びの改革推進

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部