キャリア教育コラム

よく分かるディープ・アクティブラーニング

更新日:2018/05/18

少子高齢化、グローバル化、人口減少など、これからの子どもたちがこの先成長して社会で活躍する頃には、日本は厳しい挑戦の時代へ入るだろうと言われています。そして、これらの問題に立ち向かい、生き抜くため教育現場ではアクティブラーニングという教育法が積極的に導入されてきました。しかし、最近になり、アクティブラーニング授業の形骸化が危惧される問題が浮かび上がってきています。

文部科学省でも2017年2月に公表した次期学習指導要領(案)の中で、京都大学の松下佳代教授が編著した「ディープ・アクティブラーニング 大学授業を進化させるために」という本を参考に、同様の課題を挙げています。そこで、この記事ではディープ・アクティブラーニングについて、松下佳代教授の著書の内容を元に簡単に解説していきます。

 

 

ディープ・アクティブラーニング

1.ディープ・アクティブラーニングとは?

ディープ・アクティブラーニング提唱の経緯

ディープ・アクティブラーニングという教育法について理解する前に、まずは松下教授がなぜこの本を書くことになったのか、その経緯から理解していきましょう。教育現場ではアクティブラーニングの導入に力が入れられていますが、冒頭でも挙げたようにグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションなどの授業形態にばかり注目が集まりすぎて、却って学生が受動的になってしまっていると松下教授は指摘しています。つまり、グループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションという活動に焦点を当てるあまり、活動と知識内容に乖離をもたらし、学生が活動に構造化されていると考えました。

 

アクティブラーニングの形骸化

 

そして、松下教授は「大学での学習は単にアクティブであるだけでなく、ディープでもあるべきだ」とし、「ディープ・アクティブラーニング」を提唱しました。そこで、ディープ・アクティブラーニングをよりわかりやすくまとめ、教育現場での実践に結びつけるためにこの本を書くに至りました。

 

 

アクティブラーニングの課題点

ディープ・アクティブラーニングという教育法が生まれた背景には、アクティブラーニングを実施している中で発生してきた課題が密接に関係しています。そこで、まずはアクティブラーニングの課題について説明しましょう。

 

アクティブラーニングの主な課題は何度も説明しているように、グループディスカッションなどの活動に重きをおきすぎて、学習の質の向上には繋がらず、結局学生の積極性を育てるどころか、学生が受動的になってしまっている点です。そして、2017年2月に文部科学省より公表された「次期学習指導要領(案)」では「アクティブラーニング」という言葉は消え、「主体的・対話的で深い学び」という表現に置き換えられました。アクティブラーニングという文言が消えたからといって、また新しい指導方法を導入しなければならないということではありません。しかし、これまでのアクティブラーニングでは結局「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」ということが上手く実践できていなかった結果を受け、わざわざこの表現に置き換えられたと考えられます。

 

 

今後は、アクティブラーニングでは実践できなかったこれら3つの学びを、これまで実施してきた授業を工夫・改善することで、上手く展開して行かなければなりません。ただ、これに関しても松下教授はこの3つの学びがそれぞれに多様な意味を持つことになるので、三者の間で葛藤を起こすこともあるだろうと述べています。アクティブラーニングより生まれた「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を上手く現場で導入・実践しなければならない点も課題と言えるのではないでしょうか。

2.ディープ・アクティブラーニングの定義

ここまで松下教授がディープ・アクティブラーニングを提唱することになった経緯や、ディープ・アクティブラーニングが生まれるきっかけにもなったアクティブラーニングの課題について説明しましたが、そろそろ本題のディープ・アクティブラーニングの理解を深めることにしましょう。

 

Deep Learning

 

ディープ・アクティブラーニングの概念というのは、アクティブラーニングとディープ・ラーニングを組み合わせて作ったものです。「学習の形態に焦点を当てるアクティブラーニング」と「学習の質や内容に焦点を当てるディープ・ラーニング」の2つを取り入れることで、学生に対してより効果的な指導ができるのではないかと考えられています。また、松下教授の「深い学習」「深い理解」「深い関与」に着目したディープ・アクティブラーニングの提案は次期指導要領の審議でも参照され、「深い学び」という文言で採用、反映されることになりました。

3.アクティブラーニングと何が違うのか

ディープ・アクティブラーニングの定義について理解できたら、次にアクティブラーニングとの違いを見て行きましょう。前項でも述べたように、アクティブラーニングとは学習の形態に焦点を当てるもので、「学生にある物事を行わせ、行っている物事について考えさせること」です。そこで、実践の場ではグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションが用いられるのです。

 

一方でディープ・アクティブラーニングとは、「学習の質や内容の深さに焦点を当てる教育」のことで、実践の場では仮説実験授業というものが用いられることがしばしばあります。因みに、仮説実験授業というのは、子どもが日常生活の中で経験的に形成してきた概念を踏まえながら科学の基本的な概念を獲得させることです。

 

要するに、アクティブラーニングとディープ・アクティブラーニングの違いは、「学習の形態に焦点を当てるのか」それとも「学習の質や内容の深さに焦点を当てるのか」ということなのです。

4.アクティブラーニングからディープ・アクティブラーニングへ

Knowledge Learning

アクティブラーニングという教育法の表現が2017年2月に公表された次期学習指導要領(案)の中から消え、その代わりに「深い学び」という言葉が用いられたように、今後教育現場ではディープ・アクティブラーニングの導入・実践の必要性が高まっていくことでしょう。アクティブラーニングの本質自体まだ十分に理解がされているとは言えませんが、「学習形態(活動)に焦点を当てすぎている」せいで「活動あって学びなし」という現象が起こっているため、アクティブラーニングからディープ・アクティブラーニングへの転換が必要なのです。

5.学習への浅いアプローチ、深いアプローチ

ディープ・アクティブラーニングとは、「学習・学びの深さ」を重点におく教育法ですが、最後に学習への浅いアプローチと深いアプローチについて説明しましょう。

 

ディープ・アクティブラーニングが大切にしている「深いアプローチ」とは、次に挙げる6点です。

①これまで持っていた知識や経験に考えを関連づけること。
②パターンや重要な原理を探すこと。
③根拠を持ち、それを結論に関連づけること。
④論理や議論を注意深く、批判的に検討すること。
⑤学びながら成長していることを自覚的に理解すること。
⑥コース内容に積極的に関心を持つこと。

 

 

また、一方で「浅いアプローチ」というのは次の6点です。

①コースを知識と関連づけないこと。
②事実を暗記防止、手続きをただ実行すること。
③新しい考えが示されるときに、意味を理解するのに困難を覚えること。
④コースか課題のいずれかにも価値や意味をほとんど求めないこと。
⑤目的や戦略を反映させずに勉強すること。
⑥角のプレッシャーを感じ、学習について心配すること。

 

 

深いアプローチは、知識や経験をもとに様々な視点から課題について考え、場合によっては関連づけさせたり論じたりすることです。一方、浅いアプローチというのは、自らの経験・知識を応用することはおろか関連づけて考えることもせず、課題の表面的な部分をただ見るだけで終わらせることなのです。ディープ・アクティブラーニングについて今一度考える際には、「深いアプローチ」「浅いアプローチ」という視点から見てみるのも良いかもしれません。

 

松下佳代教授とはどんな人?

ディープ・アクティブラーニングを提唱している松下佳代教授は、京都大学高等教育研究開発センターで大学教育の実践的研究を行なっています。主な研究分野は教育学、教育工学、教科教育学で、アクティブラーニングについては一時的なブームに振り回されることなく、理論的・実践的により良いものに向上させていくことが、日本の科学教育において変わらぬ課題であると述べています。

 

 

【著書】
松下佳代著 勁草書房 2015年1月22日発売
ディープ・アクティブラーニング 大学授業を深化させるために

6.まとめ

新しい教育

 

学びの質と内容を重視したディープ・アクティブラーニング。教育現場での認知が今後より広がり、教育の質向上に繋がるようにこの書籍を活用してみてはいかがでしょうか。時代が変化するように教育に求められるものや実戦方法も常に変わって行きます。現代の日本社会に求められ、これからの時代を生き抜くことができる若者たちを育てることが私たち教育者ができることであり、するべきことなのではないでしょうか。

 

 

■参考
招待論文 松下佳代 『科学教育におけるディープ・アクティブラーニング 概念変化の実践と研究に焦点をあてて
下地 秀樹   『アクティブ・ラーニング、ディープ・ラーニング、ディープ・アクティブラーニング-講義型教職科目(「教育原論」、「教育制度論・教育課程論」、「教職概論」)を考える-

文部科学省 『教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料  アクティブ・ラーニングに関する議論
京都大学教育研究活動データベース

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部