キャリア教育コラム

参考にしたい大学におけるアクティブラーニング&PBL実践事例11選

更新日:2018/05/18

グローバル化、少子高齢化、労働環境の変化など日本における社会環境の大きな転換期を迎えている今日、教育現場ではこれからの社会を生き抜くために「自ら課題を発見し、解決する力」を育成する教育が必要とされています。「自ら課題を発見し、解決する力」を養うにはアクティブラーニングとPBLという教育法が最適であるとされ、現在多くの大学で導入・実践が推し進められています。今回は、実際の教育現場のレポートとして11大学の実践例をご紹介します。

 

大学でのアクティブラーニング

1.金沢工業大学 工学部

工業大学イメージ

・教育方針
金沢工業大学では「自ら考え行動する技術者」という教育目標を掲げ、学生に「知識を知恵に転換できる能力」を身につけさせる授業展開を行っています。また、教員は「教える教育」から「共に学ぶ教育」という視点で学生と接し、大学側は学生満足度の向上を目指しています。

 

・カリキュラム

カリキュラムの面では2本の柱を軸に授業展開をしています。1つ目の柱は、「プロジェクトデザイン教育」というものを重視した技術者教育プログラム、2つ目の柱は、「『総合力』ラーニング型授業」に基づき総合力を養うプログラムです。これら2本柱を中心として、様々な特色あるアクティブラーニングを大学4年間の教育に取り入れています。

 

・授業例1

1つ目の柱「プロジェクトデザイン教育」を重視した授業では、「課題の発見、問題の明確化、解決策の創出、評価・選定、設計の具体化」という技術者が実社会で経験する問題解決の過程を、授業を通して身につけさせています。授業はグループワークで進められ、次のような順に行われます。

①解決策が一つではない問題にチャレンジし、試行錯誤を繰り返しながら解決策を探し出す。
②解決策を見つける途中にクラス内でプレゼンテーションを実施し、他人の意見を上手く自分たちの活動に取り込んでいく。
③チーム活動を通してチーム内での個人の責任、他人との協調の重要性を知る。
なお、授業内での教員の役割は、プロジェクトデザインをしていくための過程や手法を解説して、適宜学生の相談に乗るというコーチ役に専念します。

 

・授業例2

2つ目の柱「『総合力』ラーニング型授業」を重視した授業では、コミュニケーション力、協働する力、学習態度、意欲など社会で求められる力を育成することを目的とし進められています。
そして、先に挙げた「総合力」を身につけさせるためには、学生を能動的に授業に参加させるアクティブラーニング型の授業が適しているとされ、一般教養の授業でもアクティブラーニングが導入されています。例えば、一般教養の「日本学」の授業では、日本に関するテーマについてグループ討議や課題学習、結果の発表を行っています。学生は次に挙げる学習手順を繰り返し行うことで総合力を向上させていくのです。

①知識を取り込むこと
②思考・推論・創造すること
③チームとしてコラボレーションしリーダーシップを発揮すること
④発表・表現・伝達すること

大学側は教職員と在校生には毎年、企業と卒業生(1年目)には3年に1回、教育内容や成果に関するアンケート調査を実施し、現行のアクティブラーニングを主軸とした教育の成果を検証しています。

2.岡山大学 工学部 機械工学科

岡山大学

 

・教育方針・カリキュラム

「想像力を発揮して新しい技術・製品が開発可能な21世紀型高度技術者」の養成を教育の目的としている岡山大学工学部機械工学科では、大学1年生から大学院修士課程までの各学年にアクティブラーニングとPBLを取り入れた授業を進めています。

 

・授業例

この大学では、次のような順にアクティブラーニングが進められています。
①1年次「機械工学ガイダンス」でグループワークを通して大学での勉強法、プレゼンテーション、情報検索の方法を学ぶ。
②2年次「創成プロジェクト」で発想力と創造力を養う。
③3年次「創造工学実験」で測定する対象を学生自ら探し、選び実験を行う。(測定装置の使用方法は教員が教えます。)

上記の創成プロジェクトでは振り返りシートを導入しており、担当教員の評価結果を記入する欄が設けられています。評価欄は個人評価とグループ評価の2つの欄があり、個人評価の欄には「リーダーシップ」「課題探求力」「チームワーク」「実務能力」「創成能力」という5つの評価項目が設定されています。
この振り返りシートは「創成プロジェクト」の授業内で3回記入することになっており、授業期間の間に教員と学生との間で3往復することになります。このやり取りの過程では、学生は自分の成長を確認しながら授業に取り組むことができるのです。

3.産業能率大学 経営学部

キャリアデザイン

 

・教育方針

産業能率大学は、教育理念の中にアクティブラーニングの実践が謳われており、「学問を大学の中だけにとどめず実践の場に移し、世の中で実際に役に立つ能力を育成する実学教育」を掲げています。現実のビジネス社会、とりわけマネジメントに関する現実の問題を学生自身で発見し、状況の変化に適応して問題解決できる能力育成に力を入れています。

 

・カリキュラム

カリキュラムでは、講義とアクティブラーニングを「代替関係」ではなく「補完関係」と位置づけ、「専門教育科目」「実務教育科目」「キャリアデザイン科目」「基礎教育科目」の4つの科目群全てにアクティブラーニングを取り入れています。

 

・授業例

大学4年間を通して設置されている「キャリアデザイン科目」では、学年ごとに次のように進められています。
①1年次では「働くこと」と「企業の仕組み」についての講義受講、職業適性検査の実施、キャリアプランシートの作成を行う。これらのステップを通して大学4年間ですべきことを明確化させる。
②2年次では「キャリア設計と自己開発」の授業で業界と職種について講義を受け、4名程度のグループでそれぞれの職種に必要な知識・技能などを話し合って発表する。
③3年次、4年次には専門ゼミでキャリア教育を担い、自己PRの作成、模擬面接練習、就職内定先企業・業界研究のレポートまとめなどを行い、学生自身のキャリア形成意識を高めていく。
アクティブラーニングとキャリア教育を組み合わせて行うことで、社会に役立つ大学教育を実践できているのです。

4.立教大学 経営学部

立教大学

 

・教育方針・カリキュラム

「ビジネスを通して、自己実現と社会貢献を同時に行えるリーダーシップを有する人材を育成する」ことを教育目的として掲げている立教大学経営学部では、アクティブラーニングを経営学科で導入しています。経営学科が実践しているアクティブラーニングは、「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」という形で授業展開されています。BLPが目指すのは企業経営などに求められるような強力なリーダーシップをもつ人材育成ではなく、ビジネスの現場における「他人に気を配り、小さなチームをまとめて全体で成果を上げることができる人材育成」です。

 

・授業例

具体的には次のステップの順にBLPは進められています。(授業は1〜3年に組み込まれています。)
①1年次では「リーダーシップ入門」として、問題解決グループプロジェクトのディベートを通して論理思考力を養う。
②2年次では、引き続き問題解決グループプロジェクトでリーダーシップに必要なコミュニケーション力や批判的思考を養う。
③3年次では、起業グループプロジェクトで実際に企業とコラボレーションし、サービスプログラムを考案する。
BLPの授業を通して『不満を提案に換える』という考え方を学び、ビジネスマインドを身につけることがこのプログラムの大きな成果となっています。

5.鈴鹿医療科学大学

薬学部イメージ

 

・教育方針・カリキュラム

鈴鹿医療科学大学の薬学部では、4年次の後期に設置されている「基礎分野のヒューマニズム教育」でPBL方式による自己学習教育を実施しています。

 

・授業例

授業展開は次のように組まれています。
①1グループ10人で構成されている小グループで毎回同一症例を取りあげて、患者の臨床上の問題点、薬物治療の問題点、症例患者をチーム医療の中でケアする上での問題点を抽出する。
②各学生は自己学習し、1週間後と2週間後に学習成果をグループで発表・議論し、患者の薬学的ケアについてグループでの方針を決定する。
学習成果をグループ内で発表する際には教員がチューターとして同席します。しかし、教員は学生の発言について評価するだけで、教育的介入は一切しません。教員がこのように接することで、学生は自ら自己学習をするようになるのです。

6.鎌倉女子大学

養護教諭イメージ
・教育方針・カリキュラム

鎌倉女子大学では、家政保育学科で養護教諭一種免許を取得するのに必修の授業である「教育保健福祉」に関連した科目として設置してある、「健康相談活動」の中でアクティブラーニングを取り入れています。

 

・授業例

具体的な授業展開の方法は次のように進められます。
①学生が予習の部分で電子媒体のeポートフォリオを用いて、教科書に沿って特定の病気のある子どもを必ず1名含み、日常の保健室の場面を想定した事例を提出。
②授業内では、グループワークでそれぞれが予習した事例の検討。
③グループごとに実際にロールプレイを行う事例の決定。
④養護実習室の保健室でロールプレイを行い、演じた学生、見ていた学生双方が対応の優先順位や言葉かけなどについて協議。
⑤ロールプレイの授業終了後にはeポートフォリオを再度利用し、養護教諭役が記入する授業用の「実習報告書」を提出。
ロールプレイの授業を通して、養護教諭に必要とされるコミュニケーション能力、組織における専門性を生かした協働力、判断力などを身につけさせることが目標とのことです。

7.京都薬科大学

薬学部イメージ
・教育方針・カリキュラム

「早期体験学習」を通して「医療人としての自覚と問題発見・解決能力の修得」を図っている京都薬科大学では、大学内外で実施するカリキュラムにアクティブラーニングを取り入れています。

 

・授業例

早期体験学習では、大きく分けて次の3つのカリキュラム展開をしています。
①薬害講演会
②救命応急手当て、ハンディキャップ体験、ようこそ先輩
③病院・薬局、企業、研究室見学会
これらの授業を体験した後には得られた成果などをプレゼン形式にまとめ、意見交換会を通してコミュニケーション力、問題発見・解決能力の基礎を学ぶことができます。そして、学生側は6年間の薬学の学習に対するモチベーションも高めることもできます。
また、特に病院・薬局見学、ハンディキャップ体験や薬害被害者の講演会などでは、将来の医療人としての自覚を高め、「生命の尊厳」や「優しさ」など人間性についても肌で感じることができる授業展開にもなっています。

8.女子栄養大学

女子栄養大学

 

・教育方針・カリキュラム

女子栄養大学では、渋谷まさと教授が担当する「解剖生理学」でアクティブラーニングが実践されています。

 

・授業例

渋谷教授の授業では、次に上げる4つの学習方法をアクティブラーニングの一環として取り入れています。
①予習させる仕組みづくり
eラーニング教材「一歩一歩」を活用し、専用のウェブサイト上で予習内容確認テストに合格することが単位取得の必須条件にもなっている。
②先生ごっこ
授業は2〜3名のグループを作って進められ、10分程度の間に先生によって説明されたイラストをグループ内で交代して相手に教え合う。
③テンポの良い講義構成
「聞く・話す・書く」という動作をバランスよく取り入れた授業構成で、学生が飽きたりしないようにクラス全体に活気溢れる雰囲気づくりを考えて授業展開。

上記4つの点を重視した授業のおかげで、低学力者の点数著増やミニ確認テストに受講生全員が合格することができ、脱落者が出ないという成果を出すことができています。(※ミニ確認テストは無数に再受験の機会は与えています。)

9.椙山女学園大学

椙山女学園大学

 

・教育方針・カリキュラム

椙山女学園大学では、長野県木曽町での4泊5日の合宿型集中講義でアクティブラーニングを取り入れています。受講学生は教育学部子ども発達学科の学生で、教育現場の抱える課題発見と解決能力を伸ばすために、自ら行動できる力を養うことを目的としています。

 

・授業例

授業は、事前学習と実習の2つのステップを踏んで行われます。事前学習では教科書を使用して河川の上流、中流、下流の特徴や用語理解、化学成分の濃度そして、居住地域の水道水源の浄化方法などについて理論的に学びます。実習では、木曽町の合宿体験を通して水生生物の調査・分類・計数や水質分析などを行い、河川における保育・学習指導案の作成及び実践を行います。もちろん、実践では子ども向けの体験授業を行うので、実習では水泳、橋からの飛び込み、焚火、魚釣なども経験します。そして、全ての実習が終わった後には報告書を作成します。
この授業を通して学生たちは、通常大学内で行われる学習では体験できない本格的な自然科学的調査を経験することができます。また、ある程度の肉体的・精神的負担をかけることで学びの定着を深めることもできるのです。

10.金城学院大学

薬剤師イメージ2
・教育方針・カリキュラム

金城大学薬学部では「高いコミュニケーション能力を備え、人のこころが分かる専門性の高い薬学ジェネラリストを育て、地域社会並びに医療現場で信頼される薬剤師として活躍する人材を育成する」ことを目標としています。そして、この薬学部ではアクティブラーニングが導入されており、「薬学PBL」という授業で人材育成に力を入れています。

 

・授業例

具体的には、PBLチュートリアル教育を授業に取り入れ、次のようなルールの下展開されます。
①1年生を13人程度のグループに分ける。
②各グループに学科の教員が持ち回りで1名つく。
③2年生5名程度もチューターとして授業に参加する。
授業は2週間単位で1課題に取り組むことになっており、テーマ設定、調査・レジュメ作成、グループ内発表、全体報告会の流れで進められます。持ち回り教員と2年生のチューターは、テーマ設定とグループ内発表の時間に参加し、2年生は必要に応じて1年生にアドバイスをします。
学年の枠を超えて授業展開することで、2年生が1年生の良いロールモデルとなり、2年生にとってもサポートすることを通してコミュニケーション力を高めることができ、薬学部が目指す人材育成に効果を出しているのではないでしょうか。

11.明治薬科大学

明治薬科大学恩田重信生家

 

・教育方針・カリキュラム

創造的な薬学研究者・技術者として幅広く活躍できる人材となるために、自主的な情報収集と討議を通して問題解決を図る習慣とプレゼンテーション能力を育成することを目的としている明治薬科大学では、1年生の授業でアクティブラーニングを取り入れています。

 

・授業例

授業構成は、第一クールと第二クールの2つに分けられています。それぞれのクールでは4ステップで進められ、グループごとに「テーマ薬の調査→まとめ→発表資料作成→発表」の順で展開されます。授業の目指すところは、「テーマ薬に関しての情報収集力」と「プレゼンテーション力」を身につけることです。
また、対象が1年生であることから第一クールでは、教員が調査やまとめの段階で積極的にサポートする必要があります。しかし、第二クールでは基本的に第一クールでの経験を活かして進めるようになっているので、教員は学生からの質問があったときのみ応えるということになっています。
授業を受講した学生のうち80%の学生が「この授業を受講したことにより、あなたのこの授業の関連分野または薬学への興味が増したか」という設問に対して「強くそう思う」、「そう思う」と回答しています。

まとめ

大学生のアクティブラーニング

今回ご紹介した11大学では、学生の主体性を伸ばし、「自ら課題を発見し、解決する力」を身につけさせようと様々な工夫を授業に取り入れています。そして、共通している点は、大学側の一方的な教育として実践しているのではなく、学生の満足度も高く年を追うごとに改善しながら授業展開を行っていることです。アクティブラーニングは教員と学生が一緒になって作り上げていくもので、「共に学ぶ姿勢」が重要になっていきます。これらの実践例をもとに今後も広くアクティブラーニングが教育現場で推し進められることに期待したいです。

 

 

■参考
河合塾レポート『大学のアクティブラーニング
2012年度版日本私立大学協会教育学術新聞『教授法が大学を変える

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部