キャリア教育コラム

問題解決型学習・PBLとは?問題解決力で「生きる力」を育む学習法

更新日:2018/03/01

教育現場で最近話題になっている問題解決型学習(PBL)。どんな教育方法なのかご存知ですか。問題解決型学習(PBL)という言葉だけ独り歩きしてしまい、どのように実施するもので、どんな効果があるのかわからない点が多いのではないでしょうか。ここでは問題解決型学習(PBL)の基礎知識について実践例を交えながらわかりやすく解説します。

 

PBLとは

 

1.問題解決型学習(PBL)とは?

問題解決型学習(Project Based Learning)。これは別名「課題解決型学習」とも呼ばれ、知識の暗記などのような生徒が受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法のことを指します。生徒自身の自発性、関心、能動性を引き出すことが教師の役割であり、助言者として学習者のサポートをする立場で学習を進めて行きます。
また正しい答えにたどり着くことが重要ではなく、答えにたどり着くまでの過程(プロセス)が大切であるという学習理論のことで、1900年代初頭アメリカの教育学者ジョン・デューイが初めて教育現場で実践に取り入れたとされています。

 

2.問題解決型学習(PBL)が注目される理由

この問題解決型学習(PBL)は現在文部科学省が進める「アクティブラーニング」の教育方法として非常に注目を集めています。なぜ注目されているのか、理由を探っていきましょう。

そこでまずは問題解決型学習(PBL)が重要視されている理由を知る前に、文部科学省が力を入れている「アクティブラーニング」について理解する必要があります。アクティブラーニングの目指すところは「正解・解答のある課題に取り組み知識・技能を得ること」ではなく、「正解のない議論(課題)を通して問題解決へのアプローチ方法を身につけること」です。最終的に「主体的・協働的に問題を発見し、解決する能力」を養うことを目的としており、文部科学省が力を入れているのは、そういった能力をこれからの子どもたちに身につけさせたいからです。

 

ラーニングピラミッド

 

そしてこのような「正解のない議論(課題)を通して問題解決へのアプローチ方法を身につけること」を通して、「主体的・協働的に問題を発見し、解決する能力」をつけるために適した教育方法が問題解決型学習(PBL)であり、注目されている所以なのです。

 

3.問題解決型学習(PBL)の2つの方法

ここまで問題解決型学習(PBL)の定義と教育現場へ導入することが注目されている理由について述べてきましたが、今度は問題解決型学習(PBL)の教育方法について触れていきましょう。まずは問題解決型学習(PBL)の大まかな流れをご説明します。問題解決型学習(PBL)では次に挙げる6つのステップを踏んでいきます。

 

① 問題に出会う(テーマを決める)
② どうしたら解決できるのか実践的・論理的手法によって考える(解決策を考える)
③ 相互に話し合い、何を調べるのか明確にする
④ 自主的に学習する
⑤ 新たに獲得した知識を問題に適用する
⑥ 学習したことを要約する。

 

このすべてのプロセスを経ることで、最終的にこれらの過程で答えにたどり着くまでの過程(プロセス)自体が重要であるということを学習するのです。

 

そして問題解決型学習(PBL)の教育方法には「テュートリアル型」と「実践体験型」の2つ方法があります。「テュートリアル型」は一つの課題に対して仮説をたて、仮説を先ほど紹介した6つのステップにそって検証していく方法です。一方「実践体験型」は課題を実社会の中に設定し、民間の企業など実社会に入り込みながら、6つのステップを踏んで問題を検証していく方法です。2つの方法のうち「テュートリアル型」の方が実施が容易なため問題解決型学習(PBL)の主流な学習方法として行われています。

PBLの二つの手法

 

 

4.教育機関で行われた問題解決型学習(PBL)の事例

それでは問題解決型学習(PBL)は実際の教育現場ではどのように実践されているのでしょうか。学習の大まかな流れや方法について理解ができたところで、3つの教育機関の実践例をご紹介します。どの教育機関も問題解決型学習(PBL)をインターンシップに取り入れ実践体験型PBLとして実施しています。

 

インターンシップ

 

実践事例1【新潟大学 農学部】

インターンシップでは新潟市食育・花育センターにて市民と小学生対象に体験学習講座の学習支援を行い、その後プログラムを学生自らが企画・運営します。そしてプログラム終了後、内容の振り返り、課題の洗い出しを行い、体験授業内容を再度企画しインターンシップ先に提案を行います。一度行ったプログラムを検討しなおすことで、学生らは試行錯誤しながら企画を練り直すのです。
インターンシップに問題解決型学習(PBL)を取り入れたことで、学生自身が自分の弱みや強みを知ることができました。あわせて企画力・コミュニケーション能力など就業に必要な力を養うことができるなど教育効果の向上が、事前事後のCANチェック、PROGテストの測定結果、数値としても現れています。また参加した学生によると、当初予想していた以上に得るものが多く社会人基礎力(前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力)が身についたと感じていると答えています。

 

 

実践事例2【福岡工業大学 全学部】

福岡工業大学では地元企業が実際に抱える問題に対して、4週間の長期インターンシップを通じて企業と一緒に数値目標を目指し、課題解決のプロセスを実践しています。そしてその過程で実社会でも応用可能な凡庸的能力をもった実践型人材を育成することを目指しています。具体的な取り組み内容としては、システム開発系企業が開発に困っているシステムを一緒に商品化する等です。こういった形式でインターンシップをすすめたことにより参加した学生は、仕事に対する「責任」や「やりがい」を強く感じることができたと語ります。またインターンシップ終了後には「大学の勉強に力を入れるようになった」や「具体的な次の目標に向けて学修を始めた」など、自分の将来設計とそれに向けて何が必要でどうしなければならないのかということが学生自身で気づくことができるようになりました。

 

 

実践事例3【仙台高等専門学校 専攻科】

仙台高等専門学校では約3ヶ月のインターンシップ期間を設けて、地元企業へ学生を派遣し画工で学んだ知識を実務にどう役立てるのかを理解するための、「知識を知恵に変える実践を行うプログラム」を組んでいます。具体的には次のようなプログラムを行っています。

 

・企業訪問前に学内で事前講習を実施し、インターンシップに関する全般研修を実施
・企業の概要や施設・設備投資の概要把握(1週間目)
・与えられた課題の把握・文献調査を行い、計画を立案(1ヶ月目)
・企業内の指導者の指導を得ながら実務に取り組む。途中中間発表を行い、進捗、テーマ等を再検討する(2ヶ月目)
・最終日までの課題内容を再検討し、課題解決を継続。最終発表(3ヶ月目)
・事後学習として参加者全員がインターンシップ内容の振り返りや学んだことを発表し、自分と他者の体験内容の共有

 

この学校の特徴として、長期インターンシップを行うため全教員が協力し、専攻科1年生の該当時期に3ヶ月間通常授業を入れない時間割を組んでいることもあげられます。
このインターンシップを通して生徒の学習に対する姿勢に積極性が見られるなど変化がありました。また期間中には受け入れ企業の方の出張にも同行し企業の理解を深めるようにし、地元企業の魅力と地元で生きて行く地方創生の意義を考える良い機会にもなったそうです。そしてインターンシップ内で進めた問題解決型学習(PBL)のおかげで企業の抱える問題に生徒と企業が一緒に取り組んだことで、お互いwin-winの関係を構築することができ、ビジネスに必要な人間関係を学ぶことができています。

5.まとめ

問題解決型学習(PBL)の目指す目標は「正解の決まった課題に取り組み知識と技能を身につけること」ではなく「正解のない議論(課題)を通して問題解決へのアプローチ方法を身につけること」です。これまでの教育法ではあまり重要視されてこなかった「物事を学ぶ過程」にフォーカスすることで、勉強に対する意欲が上がるだけではなく、積極性やコミュニケーション能力の向上、働くことへ関心を持つなど実社会で必ず役に立つ力を養うことができるのです。これは4項で紹介した3つの教育機関の実践例からも実績として照明されています。問題解決型学習(PBL)はアクティブラーニングの教育法として今後ますます注目され、教育現場への導入が活発になっていくでしょう。

 

 

■参考
文部科学省『新しい学習指導要領の考え方-中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ-
日本教育デザイン学会―JEDI-『授業は変わるか?課題解決型学習の授業法を開発へ、文科省が研究所を設置
PBL問題解決型授業事例報告
文部科学省『インターンシップ好事例集 ―教育効果を高める工夫17選―

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
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執筆者:キャリア教育ラボ編集部