キャリア教育コラム

高大接続改革とは?その目的と改革のポイント

更新日:2019/10/03

近年、2021年1月から導入予定となっている大学入学共通テスト(以下、共通テスト)への注目が高まりつつあります。共通テストは記述式問題や英語の民間試験を取り入れている点で従来のセンター試験と大きく異なりますが、共通テストとともに各大学の個別試験もまた変わろうとしています。

 

今回のテーマである高大接続改革の目的とポイントを踏まえることで、これからの高校教育及び大学の教育理念・ポリシー制定をスムーズに進めやすくなるでしょう。

 

高大接続改革とは

 

高大接続改革は、高校教育と大学教育をひとつながりのものとして捉えた「高大接続教育」を進めるための取り組みです。

従来の高校教育では、試験で良い点を取り大学入試に合格することが重視されがちでした。しかし、高大接続改革によって高校教育は大学受験のためだけに学ぶ場ではなく高校・大学教育を通じて社会で生きる力を伸ばす場となります。また、高校と大学の接点を増やすことでそれぞれの学生の学習意欲を高めるねらいもあります。

 

中央教育審議会(中教審)は、高校教育・大学教育・大学入試の一体的改革を進めることが新しい時代にふさわしい高大接続教育の実現につながると述べています。文部科学省はこの答申を受けて2015年に高大接続改革実行プランを公表し、同年に高大接続システム改革会議を発足させました。

 

文部科学省は、将来の見通しが難しいこれからの社会において「子どもたちひとりひとりを成長させるカリキュラム」「的確に評価するための選抜制度」「多様な能力を育成し社会へ送り出す大学教育」の3つを一貫したシステムとして運用することの重要性に言及しています。

 

各大学の個別選抜の改革

 

さまざまな背景を持つ学生の大学への受け入れを促すため、大学入学希望者の能力・意欲・適性などを多面的かつ総合的に評価できる大学入学者選抜の改革を実施します。

特に各大学の個別選抜においては、学力の3要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」)及び大学独自の教育理念やアドミッション・ポリシーを重視した多面的・総合的な選抜方法をとることを促進します。

 

また、文部科学省ではそれらの入試改革に対する評価の推進や支援の充実を図ります。

 

改革の方向性

大学入学者選抜改革における最大のねらいは、入学希望者の能力・意欲・適性などを多面的かつ総合的に評価できるシステムを構築することでさまざまな背景を持つ学生を受け入れやすくすることです。

 

特に、各大学の個別選抜において教育理念、アドミッション・ポリシー、そして学力の3要素を踏まえた多面的・総合的な選抜システムの採用を促すことで、各大学の教育カリキュラム及び教育改革と連動した入試改革の進行につながることが期待されています。

 

このため、文部科学省では新たな大学入学者選抜のルールを構築するとともに各大学の入試改革に対する評価推進や支援充実を図っています。

 

高大接続改革実行プラン

2014年に中教審が発表した答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体改革について」の内容を踏まえて、文部科学省が2015年に公表した高大接続改革実行プランの概要は以下の通りです。

 

個別選抜改革を推進するための法令改正

アドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーの一体的な策定の義務化などによって、各大学の取り組みを推進するねらいがあります。

 

また認証評価(大学などが、5年または7年以内に1回文部科学省に認定された評価機関による第三者評価を受けることを義務付けるもの)に関する省令を改正し、認証評価の評価項目に入学者選抜を明記することが定められています。

 

アドミッション・ポリシーとは

 

アドミッション・ポリシー(admission policy)を日本語で表すと「入学者受け入れの方針」となります。各大学の特色や教育理念に基づき、各大学・学部で求める学生像や入試の内容などをまとめたものです。

 

ディプロマ・ポリシーとは

 

ディプロマ・ポリシー(diploma policy)を日本語で表すと「学位授与の方針」となります。各大学・学部が定める教育目標に基づき、卒業生や修了生が最低限身につけるべきとされる能力をまとめたものです。

 

カリキュラム・ポリシーとは

 

カリキュラム・ポリシー(curriculum policy)を日本語で表すと「教育課程の編成・実施の方針」となります。各大学・学部が定める教育目標及びディプロマ・ポリシーの達成に必要な教育課程の編成や、授業内容・教育方法に関する基本的方針をまとめたものです。

 

大学入学者選抜実施要項の見直し

 

2018年に発表された「平成33(2021)年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」では、現行の一般入試を「一般選抜」、AO入試を「総合型選抜」、推薦入試を「学校推薦型選抜」にそれぞれ変更することが決定しています。

 

この変更によってより多面的・総合的な評価を行うための改善を図りつつ、各入学者選抜の特性を明確にするねらいがあります。

 

AO入試・推薦入試の問題点と改善

現行のAO入試や推薦入試は各大学独自の基準に基づいて実施されており、大学によっては学力の3要素を適切に評価できていない場合があります。また一般入試よりも早く入試が終了するため学習意欲低下につながりやすく、結果的に学力低下の一因となることが指摘されています。

 

こうした課題を解決するため、総合型選抜及び学校推薦型選抜では共通テスト、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績などから少なくとも1種類以上を評価に活用します。

 

調査書の内容見直し

部活動やコンクール・ボランティアなどの各種課外活動に関連する実績をより詳細に調査書に記載することで、学習活動以外の実績を多面的・総合的に評価するねらいがあります。

 

また、多くの高校で絶対評価となっている評定平均値が「学習成績の状況」に変更されます。相対評価を採用することで学校間・クラス間の不公平を無くし、すべての学生を公平に評価しやすくなることが期待されています。

 

出願・合格発表時期

残りの高校生活や大学生活への影響を考慮し、出願・合格発表時期を以下の通りに設定します。

 

複合型選抜…出願時期:9月以降(現行8月)、合格発表時期:11月以降
学校推薦型選抜…出願時期:11月以降(現行通り)、合格発表時期:12月以降

 

教科・科目に係るテストの実施時期は2月1日〜3月25日(現行4月15日まで)、合格発表時期は3月31日まで(現行4月20日まで)となります。なお、学校推薦型選抜については一般選抜試験期日の10日前まで(共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日)となります。

 

アドミッション・ポリシーの明確化

中教審は、各大学のアドミッション・ポリシーにおいて入学者に求められる能力及びその能力を評価するための基準・方法、そして大学教育を通じてどのような能力を向上・発展させるかを明確に示すことの重要性について提言しました。

 

この提言を受けて、文部科学省はアドミッション・ポリシーに盛り込むべき事項に関するガイドライン及びアドミッション・ポリシーに関する取り組みの先行事例集を作成し、各大学に提供するための取り組みを進めています。

 

認証評価等の推進

認証評価機関と連携して、見直し後の大学入学者選抜実施要項を踏まえた評価による新たなルールの遵守状況の評価を推進します。同時に、各大学の独自の取り組みを促す評価(アドミッション・ポリシーと選抜方法との整合性や個別選抜の工夫改善に関する取り組み状況)を推進します。

 

また、大学ポートレート(国公私立の大学・短期大学が参加する教育情報公表サイト)の稼働・機能充実及び関係団体との連携によって、各大学の入学者選抜等に関する情報公開に取り組んでいます。

 

財政措置

各大学におけるアドミッション・オフィスの整備・強化や、アドミッション・ポリシーの明確化をはじめとする個別選抜改革のすみやかな実現を目的とした財政措置を行います。各大学が主体的に個別選抜改革に取り組みやすくなるよう財政措置の在り方を検討し、具体策を取りまとめます。

 

その一例として、関西学院大学を中心としたコンソーシアムが実施する研究(個別大学の入学者選抜におけるICT導入について)に対して最大2年間(2019〜20年)の財政支援が決定しています。

 

高大接続が目指す「生きる力」を伸ばす教育

これからの日本の教育において最も重視されるのは、新学習指導要領改定の主たる目的である「生きる力」を伸ばすことに他なりません。

 

入試改革を進め高校教育を見直す高大接続改革もまた、生きる力を伸ばすための教育・評価手法の見直しのひとつです。新しい教育手法によって学力の3要素をバランスよく育成することで、これからのグローバル化・IT化社会で活躍するために必要な生きる力を伸ばしやすくなるでしょう。

 

思考力・判断力・表現力は、自らの意見を客観的かつわかりやすくまとめる能力や自分の意見を外部に向けて発信する能力です。従来のように知識・技能の詰め込みばかりを重視する教育手法のままでは、今後ますます発展するであろうAIよりも優れた人材は育ちにくいでしょう。

 

主体性・多様性・協働性は、さまざまな背景を持つ人々と積極的に関わり協力する意欲を指します。性別・国籍・価値観などの違いにとらわれずにさまざまな人々と関わり、お互いの個性を活かしながら目的達成に向けて動く意欲を育てることで、労働人口減少やグローバル化が進むこれからの社会でも活躍しやすくなるでしょう。

 

 

高大接続改革で進む新しい人材育成

高大接続改革は、新学習指導要領の導入に伴って進められつつある教育改革の一環です。
共通テストの実施に加えて各大学で個別に行われる選抜試験の内容及び評価基準の見直し、そして各大学のアドミッション・ポリシーの明確化などが重視されています。

 

これらの入試改革によって全ての学生を公平かつ多面的に評価しやすくなり、さまざまな能力や背景を持つ学生の受け入れが促されることが期待されています。また、現行の推薦入試・AO入試の内容を見直すことで学生の学習意欲低下や学力低下を防ぐねらいもあります。

 

高大接続改革によって学力の3要素の満遍ない育成や多様な学生の受け入れ促進による大学のグローバル化が進むことで、高校・大学教育を通してこれからの社会で求められる生きる力が伸びやすくなるでしょう。

■参考
文部科学省
高大接続改革「大学入学共通テスト」について

高大接続改革の議論・検討の流れ

高大接続実行プラン

平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の改正について(通知)

現行の大学のアドミッション・ポリシー (入学者受入方針)に関する資料

大学時報(2018.5)
「文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)について~学力三要素をどのように評価するか~」尾木義久 関西学院大学アドミッション オフィサー

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部