キャリア教育コラム

キャリアガイダンス 学生の個性を伸ばすサポート

更新日:2019/08/07

多くの大学では3~4年次頃に就職活動のためのセミナーやガイダンスが実施されますが、小手先のテクニックに気を取られて自分が何をしたいか、何ができるかわからないまま漫然と就職活動を続ける学生が少なくありません。また、働くことに興味を持てないなどの理由でなかなか就職活動を始められない学生も多いようです。

 

学生が早い段階で自身の適性を見極めて自主的に将来のキャリアプランを描くきっかけ作りのひとつとして、キャリアガイダンスが注目されています。

 

キャリアガイダンスとは

 

キャリアガイダンスと聞いて「学生がスムーズに就職活動を進められるよう、大学が実施するプログラム」などを連想する方も多いかもしれません。

 

しかし、文部科学省が定義しているキャリアガイダンスは単に就職活動をサポートするためだけの教育ではありません。学生ひとりひとりが自身の希望や適性・能力を把握し、職業選択、就職活動も含めて人生設計そのものを明確にすることがキャリアガイダンスの最たる目的となっています。

 

キャリアガイダンスについてより深く知るために、「キャリア」「ガイダンス」という言葉それぞれの意味を改めて振り返ってみましょう。

 

キャリア

キャリア(career)は「職業・技能上の経験や経歴」などを意味し、特に専門的な知識・技術を必要とする職業及びその職業についている人を指します。また、キャリアには、賃金が発生する職業だけでなく賃金が発生しない活動(ボランティアや地域・PTA関連活動など)も含まれます。

 

その他に、総合職試験に合格し採用された国家公務員を「キャリア組」と呼ぶこともあります。

 

ガイダンス

ガイダンス(guidance)は、ある物事の事情を知らない人を対象として行われる初歩的な説明、案内、あるいはそのための催しのことを指します。ガイダンスを受けた人が自分自身に対する理解を深め、自身の適性を活かしてさまざまな物事に適応し自主的に問題を解決できるようになることを目的としています。

 

キャリアガイダンスとは

文部科学省では、キャリアガイダンスを「児童・生徒・学生に対する進路指導」と定義しています。学校などにおけるキャリアガイダンスは、児童・生徒・学生が自身の適性に関する理解を深め自主的に進路を選択する能力を育てることを目的として実施されます。

 

そのため、卒業後すぐに就職を希望しない学生や進路がすでに決まっている学生にとってもキャリアガイダンスを受けることは非常に有意義と考えられます。

 

キャリアガイダンスの必要性

近年、社会から学生の資質能力に関するさまざまな要請や学生の多様化により、卒業後の職業生活などへの移行支援の必要性が高まっています。国はこれらのニーズを受けて数年前からキャリアガイダンスの必要性について言及しており、2011年(平成23年)には大学設置基準第42条に以下の文言が追加されました。

 

大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。

 

新学習指導要領 生きる力

 

2020年から導入され始める新学習指導要領では、学校で扱う全教科・科目を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱を用いて整理しています。この3つの柱によって学びの目的を的確に認識・共有し、学習者の心・技・体を満遍なく育てて生きる力を伸ばすねらいがあります。

 

新しい教育方法の代表的存在とも言えるPBL(課題解決型学習)では、決まった答えがない課題・問題の中から自発的に問題を発見して自分なりの答えを導き出すことが重要な要素となります。この要素は、キャリアガイダンスとも共通しています。

 

キャリアプランを作るためには、まず自身が蓄積してきた経験や得意(苦手)なこと、将来の希望などをじっくり振り返る必要があります。このステップは、就職活動において多くの人が重視する「自己分析」に当たります。次に希望を叶えるために立てるべき目標や、目標達成のためにどんな手段を用いればよいかを考えます。

 

キャリアガイダンスが目指すものは「誰かにやれと言われたから、周りの人がしているから」といった消極的な就職活動の助長ではなく、学生ひとりひとりが独自のキャリアプランを自発的・積極的に作ることで生きる力を伸ばすための総合的なサポートと言えるでしょう。

 

・もっと詳しく
学習指導要領改訂のポイント 「アクティブラーニング」から「道徳教育」まで

 

キャリアガイダンスの事例

独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、現在国内の総合大学の62%以上がキャリア教育科目を必修科目として展開しています。それらの一例として、ここでは広島大学のキャリアガイダンス事例について解説します。

 

1990年代に全国の国立大学に先駆けて全学的な就職支援センターを設置した広島大学は、キャリアガイダンスのパイオニア的存在としても知られています。

 

広島大学

広島大学は、学生ひとりひとりが自身の個性を把握し自己表現力を伸ばすことをキャリア教育の基本としています。学生が大学生活を通じて卒業後の生き方をじっくり考え、希望・適正に合った進路・職業選択を行うためのキャリア教育を入学直後から実践しています。

 

広島大学内の「グローバルキャリアデザインセンター」では、学生たちが低年次のうちから目的意識を持って生活し早い段階でキャリアビジョンを明確にするための手助けとして、留学、インターンシップ、各種免許・資格取得、ボランティア活動などを支援しています。

 

導入経緯

広島大学は、1998年(平成10年)に日本の国立大学で最初の施設として「学生就職センター」を設立しました。センター設立当初は、学生向けの就職相談や就職活動に関する情報提供などを行っていました。

 

しかし社会が大学・大学院卒業生に求める人材像の変化や就職状況の変化を受けて進路支援・就職活動支援の在り方を再構築する必要が生じたため、学生就職センターは2004年(平成16年)に「キャリアセンター」へ改組されました。

 

キャリアセンターでは、おもに学部生と博士課程前期(修士課程)の学生を対象としたキャリア支援・就職支援を行っていました。

 

2014年(平成26年)に博士課程後期の学生及び若手研究員のキャリア開発支援を行っていた「若手研究人材養成センター」とキャリアセンターが統合し、新たに「グローバルキャリアデザインセンター」が開設されました。

 

グローバルキャリアデザインセンターでは留学生を含む学部生、博士課程後期の学生、そして若手研究者のための窓口を一本化し、全学生・若手研究員を対象としたキャリア開発支援の拡充・強化を目指しています。

 

キャリア教育の特徴

広島大学のキャリア教育は、入学直後から進路・職業を考えるための早期キャリアプログラム、専任教員による講義・ガイダンス・個別相談などの総合的キャリアプログラム、民間企業でのキャリア(人事、教育、海外業務など)を持つ専任教員・アドバイザーが指導する実践的キャリア教育の3つに大きく分かれます。

 

入学式直後のオリエンテーションではほとんどの学部で「キャリアガイダンス」を実施し、できるだけ早く自分の進路・将来について考えるよう促しています。

 

全学部・全学年向け教養教育の一部として「キャリア教育領域」を設け、「職業選択と自己実現ー自分のキャリアをデザインしようー」「キャリアデザイン概論」「ベンチャービジネス論」などの講座を開講しています。

 

例えば「職業選択と自己実現ー自分のキャリアをデザインしようー」は、恋愛・結婚・仕事・ワークライフバランスといった複数の観点から自己理解と社会環境理解を深め、自身のキャリアをデザインすること、そしてグループワークを通して社会人に必要とされるコミュニケーション能力や課題発見力、解決力などを伸ばすことを目的としています。

 

また進路・職業を考えるためのプログラムに加え、全学生及び卒業生に対して求人情報・各種採用試験や先輩の就職活動体験などを検索できるWebツール「もみじ」が公開されています。他にも、主に3年次以上の学生向けに就職ガイダンスや業界・企業セミナーなどの就職活動支援プログラムが実施されます。

 

グローバルキャリアデザインセンターでは「未来のキャリアサポーター制度」が運用されています。学生が未来のキャリアサポーターとして登録すると、既に就職活動を終えた先輩であるキャリアサポーターから就職活動の体験談を聞くことができます。そして就職活動を終えて新しくキャリアサポーターとなった学生・卒業生は、後輩のためにサポート活動を行います。

 

 

留学生のためのキャリア教育

広島大学は、留学生就職支援ネットワークシステムにも加盟しています。このシステムは日本での就職を希望する外国人留学生のためのサポートシステムであり、加盟校に通う外国人留学生は日本での就職活動・就職試験対策などに関する情報を専用Webサイトから得ることができます。

 

広島大学が運営に関わっている広島県留学生活躍支援センターでは、留学生向け就職支援の一環としてビジネス日本語養成研修やインターンシップ、留学生合同企業説明会などを実施しています。

 

学生ひとりひとりの未来と、社会の可能性を伸ばすキャリアガイダンス

 

大学・大学院卒業生に対して社会が求める人材像の変化や就職状況の変化などにより、学生ひとりひとりの資質や職業的・社会的自立に必要な能力を育てるための教育が求められています。

 

こうしたニーズを受けて、国内の多くの大学では学生が自らの適性を理解し早い段階から自主的にキャリアプランを描くことを目的としたキャリアガイダンスが実施されています。

 

キャリアガイダンスは単なる就職活動サポートではなく、職業選択・就職活動を含む人生そのものについて学生が自ら深く考え設計することを目指しています。このねらいは生きる力の育成目的とも共通しており、キャリアガイダンスの普及が、これからの社会に貢献できるグローバル人材の育成に役立つことが期待されています。

 

■参考

大学設置基準

首相官邸 緊急雇用対策本部 新卒者支援チーム関連施策広報資料 文部科学省「大学におけるキャリアガイダンスの推進」

独立行政法人日本学生支援機構「大学等における学生支援の取組状況に関する調査(平成29年度)」

厚生労働省  「大学におけるキャリア教育プログラム」

広島大学 グローバルキャリアデザインセンター

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部