キャリア教育コラム

PBLの知識を深める、PBLシンポジウム開催事例

更新日:2019/07/11

「生きる力」を育てるために多くの教育現場でPBLが導入されていますが、国内におけるPBLはまだ発展途上段階と言えます。実際に教育者側の指導力不足や学生側の理解度・意欲不足、そして設備の不十分さなどが原因で、PBLの教育効果が十分に上がらなかった例もあります。

 

教育関係者がPBLについての知識を深める手段として、シンポジウムをはじめとするPBL関連イベントへの参加も有効です。特定のテーマに基づいた事例紹介やディスカッション・質疑応答を見聞きすることで、PBLについてのイメージがより具体的なものになるでしょう。

 

今回は、同志社大学と金沢工業大学が主催したPBLシンポジウムについて解説します。両校とも早い段階から教育にPBLを取り入れており、PBLの研究・開発にも力を入れています。

 

PBLとは

 

PBLはProject Based Learning(課題解決型学習)の略であり、学習者自身による主体的な問題発見・解決を重視する学習スタイルを指します。新しい教育指導要領に登場するアクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)の一種として、多くの教育現場でPBLが導入されています。

 

教師から学習者に対する一方向的な知識・技術の受け渡しが重視された従来型の教育方式には、多くの学習者を一度に教育できるメリットがあります。しかし、教科書の丸暗記が多くなり応用力が育ちにくい、学びが受動的になりがちで学習意欲が伸びにくいなどの短所もあります。

 

PBLでは、正しい答えを導き出すことよりも答えにたどり着くまでのプロセスが重視されます。具体的な学習計画やそれまでに蓄積した知識・技術の使い方を決めるのは学習者自身であり、教師は学習活動を助けるサポーター的存在となります。

 

現在国内で主流となっているチュートリアル型PBLでは、数名のグループ単位で学習を進めます。まず提示されたシナリオから課題を見つけ、ディスカッションや自己学習・文献調査などを行って課題の解決策をまとめていきます。最後にグループ発表を行い、教師や他グループのメンバーからフィードバックを受けて終了します。

 

PBLを通して主体的に課題を発見し解決しようとする力やコミュニケーション能力などを育てることは、これからのグローバル化社会で必要とされる「生きる力」の育成に役立つと期待されています。

 

PBLについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
「PBLとは?基礎からわかる問題解決型学習まとめ」

PBLシンポジウム

 

PBLは教育界で注目を浴びているものの、まだ全ての教育機関に浸透しているわけではありません。また、PBL授業を導入してみたものの指導者側のノウハウ不足などが原因で十分な教育効果が得られなかった例もあります。

 

教育関係者や学生がPBLについての理解を深め、また他の教育機関関係者との交流や情報交換の機会を設けるために、全国各地の大学・研究機関でPBLにまつわるシンポジウムや研究会が開催されています。

同志社大学

同志社大学は、高い課題探求能力を持つ21世紀型市民の育成を目的としたPBL推進支援センターを設置しています。

 

現代の学生の多くは高い情報処理能力を持っているものの、実社会における経験が少ないことや自身が持つ知識・情報・技術を用いた課題解決能力が低いことが明らかになっています。そのため、おもに知識・技能を習得するインプット型教育に加えて課題探求・解決力を育てるアウトプット型教育の充実が求められています。

 

同志社大学では「社会の教育力を大学に」をスローガンとし、全学部を対象にPBL教育を展開しています。担当者公募制度の導入によって地域社会との連携を図り、さまざまな年齢・職業の集団から構成される学びの共同体の中で高いプロジェクト・リテラシーを持つ学生の育成に力を入れてきました。

 

ここで言うプロジェクト・リテラシーは、各プロジェクトの特性を深く理解するとともに目的に応じて効果的・効率的な推進方法を選択し、プロジェクトを創造的かつ総合的に運用する能力やモラルを指します。

 

プロジェクト・リテラシーを伸ばすことは、課題探求・解決力やコミュニケーション能力だけでなくマネジメント力・省察力・ストレスコントロール力などさまざまな能力の育成に役立つことが期待されています。

 

次に、PBL推進支援センターの具体的な活動内容について解説します。

PBL推進支援センター

PBL推進支援センターでは、全学共通の教養教育科目「プロジェクト科目」に関する各種取り組みの支援を行っています。PBL関連資料を揃えた資料室をはじめ、教材作成や取組紹介などに役立つ機器・設備の整備を推し進めています。教育の質を保証するため、外部評価を積極的に導入しているのも特徴です。

 

センターでは、プロジェクト・リテラシーの概念を用いてPBLを方法論化することでプロジェクト・リテラシーの養成を推し進めています。例えば既存のSNS型Web学修支援システムの強化や、過去の受講生のSA(学生アシスタント)登用・卒業生アドバイザーの設置などによって受講生をサポートしています。

 

また、センターでは他の教育機関のPBL取組に関する調査やPBL推進・研究ネットワークの学外展開にも力を入れています。これらの活動を通して、PBL研究・モデル開発とともにFD(教員の教育力を向上させるための取組)・SD(職員およびその支援組織の資質を向上させるための取組)を推進しています。

 

同志社大学をPBLの拠点とするため、センターでは各種教育機関の教員・学生・企業・団体などさまざまな参加者からなるPBL推進協議会を設置しています。協議会では、PBL授業の運営・評価方法などを研究するための事例報告やワークショップなどを実施しています。

シンポジウム

 

PBL推進支援センターでは、PBLに関するさまざまなシンポジウムを毎年実施しています。

 

2018年12月に実施された「PBL教育フォーラム2018 『SNS時代のPBL-アクティブな学びを救うのか、壊すのか-』」では、PBL学習のツールとしてどのようにSNSを活用・展開するかをメインテーマとして扱いました。

 

このフォーラムでは、多くの人にとってSNSが不可欠となり、またICT教育が浸透しつつある現代において、学習・探求の共同体をどのように築くかを重要な課題とし、。SNSのさまざまな長所・短所を踏まえつつSNSがアクティブな学びを助ける存在であるか損なう存在であるかを見極めることを主旨として開催されました。

 

当日は同志社大学・北九州市立大学・新潟大学のPBL取組概要と実践報告、そして各大学の履修生によるパネルディスカッションが行われました。パネリストとなった各大学の学生からはさまざまな実践報告や意見が出たものの、「使い慣れておりリアルタイムで交流できるSNSはメンバー間の情報共有ツールとして役立つが、現時点で広報手段とするには限界があり、プロジェクトの要となる目標・目的の共有には対面での議論が欠かせない」という共通見解が示されました。

金沢工業大学

「自ら考え行動する技術者の育成」を教育目標とする金沢工業大学では、PBLに基づく「プロジェクトデザイン教育」を20年以上にわたって全学的に展開しています。

 

従来の教育では高校・大学までに身につける力と社会で求められる力の関係性が不明瞭であり、「将来何をしたいかわからない」「学んだ知識を社会で活かしきれない」といったギャップが生じることがありました。このギャップを防ぐため、これからの教育界には高校・大学・社会の一貫した教育の実現が望まれています。

 

金沢工業大学は高校との連携によってより洗練されたPBLを実施し、高校・大学・社会における一貫した学習到達度の評価軸の確立を目指しています。2015年以降、金沢工業大学では高校との連携によるルーブリック(学習達成度の評価表)の開発やさまざまなPBL研修プログラムの開発・実施を進めています。

 

例えば高校教員向けのPBL指導者養成研修では、教師の立場から指導方法(進行・介入・生徒への対応など)を学ぶだけでなく生徒の立場から一連のプロセス(問題発見~解決)を体験することでPBLへの理解を深めます。

 

この他にも、金沢工業大学では高校へのPBL型特別授業の導入支援および共同開発を行っています。数か月かけて授業の目標・ねらい・条件を考慮しつつ授業を開発し、また大学・高校の教員が意見を交換しあうことで、生徒の深い学びを促します。

高大連携教育改革シンポジウム

金沢工業大学と京都工学院高校が共同主催した第2回高大連携教育改革シンポジウム(2019年)では、高校と大学が「学習者中心の教育への転換」をテーマとして議論を行いました。

 

まず文部科学省の教科調査官による講演が行われ、工業教育において高等学校学習指導要領改訂がなされた理由やこれからの高校教育のあり方などについての説明がありました。

 

また、学習者中心教育に力を入れている京都工学院高等学校・川越工業高等学校から各校の取組に関する紹介がありました。前者は先進的な取組を積極的に行い、後者は従来型の課題研究で高い成果を挙げていますが、両者とも教育に対して似通った姿勢を持つことがわかる講演となりました。

PBLに迷ったら、PBLシンポジウムへ

 

これからPBLを導入したい方や、またはPBLを導入してみたものの思うように教育効果が上がらず悩んでいる方は、PBLシンポジウムに参加して情報収集してみるとよいでしょう。

 

もしPBLについてわからないことや困ったことがあれば、質疑応答の時間を使って質問することもできます。複数の有識者が自らの経験などをもとに回答してくれるので、自力で調べただけではわからなかった新しい知見を得られるかもしれません。

 

PBLシンポジウムはおもに高校・大学の教職員や学生などを対象として実施されていますが、多くのシンポジウムは企業や地方公共団体などの関係者も参加できます。PBL授業の作り方・進め方はもちろん、産学連携や社会人向けリカレント教育などのヒントを得るためにも役立つでしょう。

 

■参考
同志社大学 PBL推進支援センター
センター概要
PBL教育フォーラム2018
- アンケート結果について -

金沢工業大学
【リーフレット】金沢工業大学におけるPBLと教育評価を軸とした高大接続の取り組み
「第2回高大連携教育改革シンポジウム」を開催

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部