キャリア教育コラム

PBLを活用した主体的研修「PBL研修」のメリットと実例

更新日:2019/05/07

教育現場で注目されているPBLは、新しい学習指導要領でも言及されている「生きる力」を伸ばす学習手法のひとつです。近年は、教育機関と自治体・企業・民間団体の連携によって進められる産学連携プロジェクトや企業研修などでもPBLが活用されています。

PBL研修では、例えば地域・社会で起こっている問題を若い世代ならではの柔軟な発想を取り入れながら解決を目指します。また年齢を問わず高い学習効果を得られるというPBLの特徴は、社会人のスキルアップや生涯学習にも役立ちます。

今回は従来型の研修では得ることが難しいPBL研修ならではのメリット、そして国内におけるPBL研修の導入例について解説します。

PBLとは

PBLは問題解決型学習〔Project(またはProgram、Problem) Based Learning〕の略称であり、単なる知識の詰め込みではなく学習者が自ら問題を発見し解決することを重視する学習法です。正しい答えを導き出すことよりも、学習者の自発性・能動性・学習へのモチベーションを高めることが重視されます。

 

教師は学習者のサポート役にとどまり、最初の課題提示や学習に関するさまざまなアドバイスなどを行います。教育機関で実施されるカリキュラムの場合、教師とともに上級生がサポーターとして授業に加わるケースもあります。

 

価値観の多様化やグローバル化が進むこれからの社会では、ただ与えられた仕事をこなすだけでなく、決まった答えがない課題に自ら進んで取り組む力が求められます。また広い視野を持ってさまざまな価値観を受け入れ、柔軟な発想を生み出す能力も重視されます。

PBLを教育に取り入れることで学習者の「生きる力」を伸ばし、国内はもちろん世界で活躍できる人材の育成に役立つことが期待されています。

■PBLについてもっと知る
問題解決型学習・PBLとは??問題解決力で「生きる力」を育む学習法
PBL授業 ~PBL学習を活用した能動的課題解決型授業とは~

PBLの活用

PBLは主に学校での授業・学習に使われますが、近年はさまざまな学びの場でPBLが活用されています。特に、大学と外部団体(自治体・企業など)が連携して行う産学連携プロジェクトや企業研修などにPBLを導入する例が増えています。

PBLはあらゆる年齢の学習者に適した学習方法であり、子どもや学生だけでなく社会人のスキルアップにも役立ちます。また、PBLから生まれたアイデアが地域や企業などで実際に起こっている問題の解決につながった例も少なくありません。

今回は、学生のキャリア教育や地域活性化などを目的としたPBLの活用方法について解説します。

PBL研修のメリット

PBL研修は、座学メインの従来型研修(大人数の参加者に対し、講師が一方向的に知識を受け渡すスタイルの研修)だけでは伸ばしにくい以下のような能力を育てるのに役立ちます。

高い学習意欲と、主体的な問題発見力、解決力

従来型研修では多くの知識を得ることや正しい答えを導き出すことが重視されやすく、自由な発想力を伸ばす機会にあまり恵まれませんでした。また研修の内容が具体的でないことも多く、参加者が学びの目的を見失ってしまうケースもあります。これらの要因は、参加者のモチベーション低下を招く一因となります。

PBL研修では、参加者自らがグループワークやディスカッションなどを通じて決まった答えのない課題に取り組むことが重視されます。グループのメンバーひとりひとりが持つさまざまな価値観や自由なアイデアの交換を通して、主体的に課題を発見し解決する力や柔軟な思考力を育てることができます。

また、PBL研修ではリアリティの高いテーマを扱います。参加者自身や身近な人が実際に直面しうる課題を扱うことで学びへの当事者意識を持ちやすくなり、モチベーション向上につながります。

より実践的な知識・技能

PBL研修では、知識・技能を得ることそのものではなく身につけた知識・技能をどのように使って課題に取り組むかが重視されます。自分がもともと持っている知識・技能をさまざまな形で活用することで、その知識・技能をより実践的なものへと昇華させることができます。

従来型学習のように試験で良い点を取るために知識を詰め込むのではなく実社会や日常生活ですぐに役立つ知識・技能を伸ばしておくことで、自分の能力を最大限に発揮し将来の仕事で良い結果を出すことにつながっていきます。

広い視野と柔軟な思考力

PBLではグループ単位で学習を進めますが、たとえ少人数グループでもメンバーひとりひとりが持つ知識・経験・価値観は同じではありません。さまざまな背景を持つ仲間が互いに協力し意見を交換しあうことで新しい世界が広がり、一人では思いつけないような素晴らしいアイデアが生まれることもあります。

自分の意見や既存の価値観ばかりにこだわっていては、グローバル化や情報化が加速するこれからの時代を生き抜くことは難しくなるでしょう。さまざまな意見に触れて広い視野と柔軟な思考力を育てることは、新たなビジネスチャンスの獲得や地域・社会・企業などが抱えるさまざまな課題の解決にもつながります。

コミュニケーション能力・協調性

コミュニケーション能力というと「他人と打ち解けたり、自分の意見をはっきり伝えたりする能力」と思われがちです。しかし、本当にコミュニケーション能力が高い人は「自分の意見を伝える能力」「相手の話を聞いて理解する能力」「その場の状況に合わせてどのように反応し、どのような話題を選ぶか判断する能力」をすべて備えています。

メンバーとのディスカッションや外部の人へのヒアリングが欠かせないPBL研修は、参加者のコミュニケーション能力を育てるのに役立ちます。PBL研修を通じて価値観が違う人やさまざまな年齢・職業・国籍の人と接し、お互いに意見を交換しあうことで、家族や仲間うちだけでなくさまざまな場面で役立つコミュニケーション能力が身に付くでしょう。

また、グループワークをスムーズに進めるためにはメンバーひとりひとりが課題に対する知識を深め次回の授業までにしっかり準備しておくことが欠かせません。仲間の足を引っ張らないようきちんと学習を進めることは、協調性の向上にもつながります。

PBL研修事例

大学が自治体・企業・民間団体と連携して実施したPBL研修や、学生ではなく教員向けに実施された研修の国内事例を紹介します。

松山東雲女子大学

心理福祉専攻の1年生を対象とするPBL研修では、久万高原町役場と協力して地域の課題解決に取り組んでいます。2018年度は「久万高原町に移住者を増やすためにはどうすればよいか」をテーマにしたグループワークが実施され、空き家の活用や移住体験ツアーの開催などさまざまなアイデアが発表されました。

授業の最終発表会には久万高原町と愛媛県中予地方局からゲストが招かれ、発表後に地元在住者ならではの意見を述べました。学生たちはゲストからの現実的な意見や厳しい意見によって深刻な過疎化が進む地方の現状を改めて実感し、さらなる学びの目標設定に役立てました。

参照:松山東雲女子大学「心理福祉専攻の課題解決型授業『PBL研修』で最終発表会が行われました」

兵庫大学

2018年、兵庫大学はより上質な学びと地域の活性化を目的とした「学内コンペ 第1回PBLグランプリ」を実施しました。このグランプリで扱うテーマは「医療福祉」「食育」「子育て」など地域社会に根ざした内容とし、参加者は自治体・企業・民間団体と連携しながらPBL学習を行います。

参加者はまず学生と教員でチームを結成し、チームごとにエントリーシート(PBLのタイトルや概要などを記載)と自己評価シート(PBLの中間結果などを記載)を提出します。その後、学長や民間団体の担当者などによる第一次審査(書類審査など)・第二次審査(学内プレゼンテーション)を経てグランプリが決定されます。

第1回グランプリでは8つのチームが第二次審査に進出し、「認知症カフェ(和カフェ)」と「もぐもぐクラブ(こども食堂)」がそれぞれグランプリと準グランプリを獲得しました。

参照:兵庫大学「学内コンペ PBLグランプリ」

山梨学院大学

山梨学院大学FD・SD研修会(教員が授業内容・方法を改善、向上させるための取組(FD)、事務職員など学校職員の資質向上のための取組(SD))では、学生ではなく大学教員をメインターゲットとしたPBL研修会が開催されました。2018年度の研修会は「PBLのカリキュラムデザイン」をテーマとして計3回実施され、東京電機大学教授・広石英記氏が講師として招かれました。

参加者はPBL学習についての理解を深め授業改善に役立てるために、学生の学習モチベーションを上げるためのシラバスや学習評価の指針となる評価ルーブリックの作成方法などを学びました。
参照:
山梨学院大学「FD・SD研修会『PBLのカリキュラムデザイン』第1回」
山梨学院大学「FD・SD研修会『PBLのカリキュラムデザイン』第2回」

大東文化大学

大東文化大学では、宮城県東松島市との友好交流「大東文化大学東松島フレンドシッププロジェクト」の一環として「東松島フレンドシップSD-PBL」を実施しています。

2018年度の実地研修では、15名の学生が「地元情報誌の市内購読者数拡大」「家庭内の備蓄率向上」などの課題に取り組みました。学生たちは3つのグループに分かれて市民へのヒアリング調査や実地調査などを行い、課題解決の検討を行い、市長や市民に対してプレゼンテーション方式で研修結果を発表しました。

また2018年度からSD活動の一環として大学職員と市の職員がアドバイザーとなり、学生たちの学びをサポートしてします。

参照:大東文化大学「東松島フレンドシップSD-PBL 現地研修を行いました」

学びの質の向上と地域活性化を実現するPBL研修

 

PBLは身近で実践的なテーマを扱うことで学びのモチベーションを高め、学習者自らが主体となって答えのない問題を解決する学習手法です。

PBLは子ども・学生だけでなく成人教育にも適しており、またこれからの時代を支える人材が身につけるべきさまざまな能力の習得に役立ちます。これらの特徴が注目されたことにより、教育機関の学習カリキュラムだけでなく産学連携プロジェクトや企業研修においてもPBL研修が導入されつつあります。地域・社会などが抱える問題の解決に若者ならではのアイデアを役立てることで、学びの質の向上と地域活性化の両方を実現しています。

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部