キャリア教育コラム

情報活用能力は、教科横断の合教科型問題を解く鍵

更新日:2018/12/28

情報活用能力は個人に求められる基礎的資質のひとつであり、目的に合わせて情報そのものや情報手段を適切に選択する、あるいは活用するために必要とされるスキルのことを指します。

情報活用能力は、近年教育現場で導入されつつある教科横断型の合教科型問題や特定の教科・科目の枠に当てはまらない総合型問題とも密接に関係しています。情報活用能力を伸ばすことは、今後の教育現場でトレンドとなることが予想される、多面的な学習の助けとなり、情報化・価値観の多様化がますます進むこれからの社会を生き抜くのに役立つでしょう。

今回は教育現場において情報活用能力という言葉が具体的に指している事柄や、高等教育における情報教育の現状と今後の課題などについて解説します。

3つの観点で構成される情報活用能力

文部科学省は新学習指導要領の中で「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点に着目し、小学校・中学校・高等学校を通じてこれらをバランスよく育成することが子どもたちの情報活用能力を伸ばすことにつながると述べています。

また、これからの時代においては変化に合わせて自ら課題を設定する力や、他者と協力しながら答えのない問題を解決する力が重要であるとも述べています。

合教科・科目型課題にも役立つ情報活用能力

答えのない問題を解決する力を伸ばすために合教科・科目型課題(複数の教科・科目にまたがった内容の課題を解決する学習)や総合型課題(特定の教科・科目にとらわれない総合的な課題を解決する学習)が教育現場に導入されつつありますが、これらの課題に取り組むときにも情報活用能力が役立ちます。

定まったスタイルがない合教科・科目型課題や総合型課題を解決するためには、どんな情報がどれくらい必要か、得た情報を使って自分なりの答えをどのように導き出し発信するか、情報を発信あるいは交換する際に他者へどう配慮すべきかなどを常に考えながら課題と向き合う必要があります。情報活用能力を伸ばすことで、こうした課題を解くスキルも自然に身につきやすくなるでしょう。

次項では、情報活用能力の3つの観点について詳しく説明します。これらの観点は互いに独立したものではなく、お互いに密接な関わりを持つと見なされています。

1.情報活用の実践力

情報活用の実践力は、課題・目的に応じて情報手段を適切に活用する能力や必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・想像する能力、そして受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力を指します。

この能力を伸ばすことで自分が得た情報が信頼できるかどうかを判断し、本当に必要な情報だけを正しく選び出せるようになります。また、情報を鵜呑みにするのではなく自分なりに思考・解釈を行うためのツールとして活用し、新しい情報を受け手が理解しやすい形に整えて発信するためにも有効です

2.情報の科学的な理解

情報の科学的な理解は情報活用のベースとなる情報手段の特性を理解する能力、自らが得た情報を適切に扱う能力、そして自らの情報活用を正しく評価・改善するための基礎的理論・方法を理解する能力を指します。

各種情報機器やネットワークの科学的側面を学ぶことで、文字・画像・数値を使った情報処理の方法や身近な情報技術の仕組み、データを収集・分析するための統計的な考え方、人間の認知的特性(感覚・思考など)と情報のかかわりなどを知るのに役立ちます。

3.情報社会に参画する態度

社会生活の中で情報・情報技術が果たす役割や世間に及ぼす影響を理解する能力、情報モラルの必要性や情報に対して負うべき責任について考える能力、そして理想的な情報社会の創造に参画しようとする態度のことを指します。

情報社会は、人々の生活を豊かにしてくれます。しかし「現実世界とバーチャルな世界との区別がつかなくなる」「大量の情報や誤った情報に踊らされ、必要な情報の取捨選択が難しくなる」「誤った情報や個人のプライバシー・肖像権を侵害する情報が簡単に広まってしまう」などの問題をしばしば引き起こします。
こうした問題について正しく理解し、情報の取り扱いによるトラブルを予防・克服するためには、情報社会に参画する態度を身につけることが重要です。

高等教育以降の情報活用能力の必要性

2017年に発表された新学習指導要領において、情報活用能力は言語能力と同じく学習基盤となる資質・能力のひとつとして位置づけられています。2020年度からの小学校プログラミング教育必修化がしばしば注目されていますが、新学習指導要領では小学校だけでなく中学校・高等学校の情報教育もより充実したものになることが明示されています。

高等学校では共通必修科目として「情報Ⅰ」が新設され、すべての生徒がプログラミングやネットワーク・情報セキュリティ・データベースの基礎などについて学ぶことになります。さらに、それらについてより発展的に学べる選択科目「情報Ⅱ」も新しく設けられます。

今回の改訂では、情報の科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力および情報と情報技術を問題発見・解決に役立てるための科学的な思考を育てることが求められています。情報Ⅰを履修することで物事をより広い視点、つまり情報とその結びつきの視点からとらえ、情報技術を適切かつ効果的に活用する能力を身につけることが期待されています。

高等学校において情報活用能力を伸ばすことは、従来のようにテストで良い点を取ったり大学入試に合格したりするだけでなく、社会に出てからの仕事や実生活の中で幅広く役立つ知識・技術を身につけるためにも役立ちます。

高校生を対象とした情報活用能力調査

2015年12月から2016年3月にかけて、文部科学省は高等学校などの第2学年(135学科 調査人数 4,552人)に対して情報活用能力に関する調査を行いました。この調査は、生徒の情報活用能力の実態の把握・情報活用能力育成に向けた施策の展開・学習指導の改善・教育課程の検討を目的として実施されました。

情報活用能力調査の結果

調査で実施された問いに対して正答率が高かったもの、低かったものを具体的に紹介します。

情報活用の実践力に関する問題では、整理されたテキスト・表・図からコンピューターウイルスの現状を読み取る問題は正答率が高かったですが、市のゴミ分別ページをもとにして「プラスチックのCDケースを何曜日に捨てられるか」を答える問題は正答率が低いという結果になりました。
また、ゲームの勝率・戦略にまつわる散布図データをもとに自分のチームの勝率を上げるための練習メニュー内容およびその理由を提案する問題や、表計算ソフトを使って不正請求の平均被害額を算出する問題も正答率が低めとなりました。
情報の科学的理解と情報社会に参画する態度に関する問題では、SNSの書き込みからモラルに反する点を探して指摘する問題は高正答率でしたが、自分が公開したい写真を肖像権に配慮して加工する問題は正答率が低いという結果になりました。

質問調査の結果

情報活用能力調査とともに、それぞれの生徒と学校長に対する質問調査が実施されました。その結果、メタ認知的方略(複数の情報を関連付けて考える、必要な情報を取捨選択し優先順位を付ける、自分が出した答えが問題の趣旨に即しているか振り返る)をとる傾向が強い生徒ほど問題の得点率が高いことが明らかになりました。

また、ICTに対する道具的動機づけが高い(コンピュータやインターネットを使って、勉強や将来の仕事に役立てようとする)生徒や、インターネット上でのルール・マナーに対する意識が高い生徒も高得点となる傾向が見られました。

高等教育以降の情報活用教育における課題

情報活用能力調査の結果から、多くの生徒は複数の情報があるWebページから目的に合わせた特定の情報を探して整理・関連付けを行う能力や、得た情報を根拠として自身の意見を的確に表現する能力が伸び悩んでいることが明らかになりました。
同様に、表計算アプリケーションを使った複雑な情報処理やアルゴリズムを使った表現、他者の肖像権・著作権などに配慮しつつ適切に情報発信・伝達することにも課題がみられます。

情報活用能力を高めて、今後の社会に必要な生きる力を伸ばそう

文部科学省では、初等~高等教育を通じて「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つをバランスよく育成することで子どもたちの情報活用能力を伸ばすことにつながるとしています。

情報活用能力を伸ばすことは、これからの教育で重視される合教科・科目型問題や総合型問題を学ぶためにも有用と考えられます。情報活用能力を伸ばすための訓練を積むことで、特定の教科・科目にとらわれず広い視点から課題発見・問題解決のための情報を探す能力や、得た情報を根拠として他者に配慮しながら自分の考えを表現する能力の習得にも役立つためです。

高校生を対象に行われた情報活用能力調査では、多くの生徒はすでに整理された情報を読み取り整理・解釈する能力や基本的な情報モラルは身につけているが、複雑な情報を比較・分類して問題解決に必要な情報を的確にとらえる能力などに課題がみられることがわかりました。

また、情報活用能力が高い生徒ほどメタ認知的方略やICTに対する道具的動機づけ、そしてインターネット上でのルール・マナーに対する高い意識を持つことが質問調査から明らかになりました。今後すべての生徒がより高い情報活用能力を身につけるためには、こうした能力を伸ばせる教育が期待されます。

【参考】
文部科学省
「新学習指導要領 (小学校及び中学校:平成29年3月告示)~情報教育・ICT活用関連部分のポイント~プログラミング基礎資料」

「高等学校学習指導要領解説 情報編」

「高大接続特別部会(第16回)資料1-2「合教科・科目型」や「総合型」を導入する必要性」

「情報活用能力調査(高等学校) 結果概要」

「情報活用能力調査(高等学校) 報告書」

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部