キャリア教育コラム

EDTechとは?学校という概念にイノベーションが起きる可能性

更新日:2018/11/30

近年の情報化社会の発達や文部科学省による次期学習指導要領の発表を受けて、教育・学習にIT技術を取り入れたeラーニングやICT(情報通信技術)教育が広く知られるようになりました。さらに最近になって教育×IT分野で生まれた新しい概念「EDTech」が、それまでの学校および教育の概念を大きく覆しうるものとして注目されつつあります。

現在の学校教育現場では、教材の重量化や教員の負担増加などさまざまな問題が発生しています。こうした問題を解決し、なおかつ学習者が楽しく効率よく学べる機会を増やすためにも、まずEDTechについての正しい知識を得ることが重要です。

EDTechとは

EDTech(エドテック)は、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語です。人によってやや定義が曖昧なものの、一般的には教育とテクノロジーの融合によって生まれた新しい教育スタイル・教育サービスを意味します。金融分野に大きな変革をもたらしたFintech(フィンテック、FinanceとTechnologyの造語)のように、EDTechもまた教育分野における既存の常識を覆し進化させうる技術として期待されています。

文部科学省が推奨するICT教育

文部科学省は教育の情報化に関する手引き検討素案の中で「授業の中でICTを効果的に活用し、指導方法の改善を図りながら、児童生徒の学力向上につなげていくことが重要である」と述べています。また、素案検討の中で行った調査研究によると、授業にICTを活用した教員の98%が「児童・生徒の関心・意欲・態度が上がった」と回答しています。同時に、各教科の得点や「知識・理解」「技能・表現」についても高い効果が出たことが明らかになっています。

ICTの導入は、生徒だけでなく教員側にとってもメリットがあります。近年は教員の多忙化が問題視されてていますが、ICTを活用することでカリキュラム作成・教材選定・採点業務・その他の校務による教員の負担を軽減することができます。こうした負担を減らすことで教員が生徒ひとりひとりや保護者とじっくり向き合う機会が増え、教育の質の向上が期待できます。
とはいえ、流行しているからといってやみくもにICT教育を取り入れるだけでは成果を上げることは難しいでしょう。情報社会の進展に代表されるさまざまな社会の変化を踏まえたうえで的確にICT教育を導入し、学校ごとの状況に合わせて継続的に教育活動の工夫・改善を重ねることが重要です。

教育における EDtech

EDtechを活用することで、従来の学習で主に使われていた紙の教材の代わりにパソコン・タブレット・スマホなどのICT端末を使った学習が可能になります。端末を使って学ぶという意味ではeラーニングと似ていますが、EDTechとeラーニングの間には大きな違いがあります。

eラーニング

eラーニングは、ICT端末を使った学習形態を指します。テキスト・動画・音声データなどを記録した電子媒体(CD-ROMなど)を使って学ぶことにより、アナログ学習のさまざまな欠点を補うことができます。

アナログ学習のデメリット

eラーニングが生まれる前は、多くの生徒がひとつの教室に集まって紙の教科書・ノートなどを使って学ぶアナログ学習が一般的でした。しかし、アナログ学習には以下のようなデメリットがあります。
まず、授業を行う場所や人員の確保に手間とコストがかかります。教師は、生徒ひとりひとりの学習状況のチェックやテストの採点などに手間をかけなければなりません。生徒にとっても、学習時間や学習場所の選択肢が大きく限られてしまいます。授業そのものに加えて通学にも時間とコストがかかり、教材が増えると荷物も重くなってしまいます

また、授業の進み方は、生徒ひとりひとりの授業内容の理解度よりもあらかじめ組まれたカリキュラムに左右されます。そのため、理解度が低い生徒や欠席が多い生徒は途中で授業についていけなくなることがあります。

eラーニングのメリット

eラーニングの登場によって生徒は時間や場所を問わず学習できるようになり、重い紙の書籍をたくさん持ち運ぶ必要がなくなりました。何度も繰り返して再生したりわからない箇所だけを選んで再生したりすることも可能なため、反復学習や弱点の解消にも便利です。さらにテストやレポートを電子化することで、教師が採点・添削にかける手間の軽減にも役立ちます。

EDtechとeラーニングの違い

eラーニングでは、先に述べたように基本的に電子書籍やあらかじめ録画した動画・音声などを使って学習します。ちょうど教科書の改訂のように、一定期間が経つと教材のバージョンや内容が更新されます。しかし、eラーニングには教師と生徒がコミュニケーションを取るのに手間がかかる、身近に学習仲間がいないため学習のモチベーションが上がりにくいなどのデメリットがあります。近年はeラーニングに学習者サポートシステムなどを取り入れたブレンディッド・ラーニングが登場しているものの、これらの欠点のために「eラーニングには向き不向きがある」と言われることもありました。

これに対して、EDTechは基本的にオンラインでのやりとりを重視します。従来のeラーニングからさらに踏み込んだweb活用によって、さまざまなメリットが生まれました。

EDtech のメリット

webの強みを最大限に活かしたEDTechは、学びのチャンスを増やしたい人にとって非常に便利なシステムのひとつと言えるでしょう。

遠隔でも高度な教育が受けられる

学生の中には、進学のために実家を出なければならない人が少なくありません。親元を離れて一人暮らしすることは良い経験になるものの、自宅から通学する場合と比べると生活費・交通費などの出費が大きくなります。

通信教育に近い性質を持つeラーニングに対して、EDTechでは授業に出席するのと同じような感覚で学ぶことができます。コストを抑えつつ遠方の学校で本格的に学びたい人にとって、EDTechの活用は大きなチャンスとなるでしょう。

自分にあった学習環境を選べる

同じ作業をしていても、静かな環境でなければ集中できない人から適度に人の気配がある方が落ち着く人までさまざまです。また、その日の気分や予定によって学習環境を変えたい人もいるかもしれません。EDTechを活用すれば、静かな自室から街中のカフェまで好きな学習環境を選ぶことができるでしょう。

また、EDTechは障がいや不登校などで学校に通いにくい生徒の学習をサポートする手段としても期待されています。

海外とも繋がる

EDTechの代表例として知られるMOOCS(Massive Open Online Courses)は、一流大学などのオンライン講義を原則無料で受けられる新しい学習環境のことです。国内はもちろん海外の授業も受けることができ、授業によっては日本語字幕をつけたり公式の修了証を発行してもらったりすることもできます。近年はYoutubeなどのように無料または低コストで使えるプラットフォームやクラウド技術が発達したため、MOOCS以外にもさまざまな学習サービスを気軽に利用できるようになりました。

双方向的な教育が受けられる

EDTechでは、教師と生徒(または生徒同士)がリアルタイムでやりとりできるシステムが活用されはじめています。例えばシステムのチャット機能を使うことで自分の意見を発表したり、わからないところを質問したりすることができます。グループチャット形式なら他の生徒の存在を感じやすいので生徒同士で協力して学ぶことができ、自宅学習でも学びのモチベーションを保ちやすくなるでしょう。

双方向型の授業は、教師側にとってもメリットがあります。授業を進めながら生徒からの反応をリアルタイムで受け取ることで、生徒が何に興味を持つか・何につまずきやすいかを把握しやすくなります。生徒から得た情報を次回以降の授業に活かすことで、授業内容の工夫・改善をスムーズに行えるようになるでしょう。

また、生徒の質問に対して教師の代わりにAIが回答・解説してくれるシステムもあります。こうしたシステムも、授業を効率よく進めるのに役立ってくれます。

教師と保護者のやりとりや、教師同士の交流にも役立つ

近年「Edmode」のように学校教育に特化したSNSが注目されています。SNS内では、授業内容についての質疑応答とともに宿題・連絡事項の管理などを行うことができます。アカウントは生徒用・教師用・保護者用の3種類に分かれており、生徒の学習や教師の負担軽減に役立つだけでなく子どもの学習状況や学校での様子を知りたい保護者にとっても便利なシステムです。

教員の業務をサポートするツールとして、小中学校・高校などの教員向けSNS「SENSEI NOTE」が登場しています。SNS上で全国の教師と交流でき、授業の進め方・教材の使い方や教師ならではの悩みなどについて意見を交換することができます。働き方に対する意識の変化や残業の増加などで教師同士のコミュニケーションが希薄化している今、「仕事について相談できる相手がいない」という悩みを抱える教員も少なくありません。SENSEI NOTEはこうした問題を解決し、教員のメンタルヘルスを保つのにも役立ちます。

ED techの現状

教育の概念を大きく覆す可能性を秘めたEDTechですが、現在の日本においてはまだ発展途上段階であると言わざるを得ません。

現在、次期学習指導要領の実現に向けて全国の学校でICT環境整備が進められつつあります。しかし学校・自治体によってICTに対する意識や経済状況が異なるため、すべての学校で満足にEDTechを利用できるようになるまではまだ時間がかかりそうです。また、教育現場でのスムーズな利用に適したLMSもそれほど普及していません。

教員のITリテラシーの向上も、大きな課題の一つです。近年はインターネット利用やパソコン・タブレット・スマホの操作に慣れた人が増えており、若手教員の中には学生時代にICT教育を受けた人も少しずつ現れはじめています。しかし、ICT教育を進めるための専門教育を受けた教員はまだ少ないのが現状です。

学びの質の向上や、教員の労働環境改善などが期待できるEDTech

EDTechは、教育とテクノロジーの融合によって生まれた新しい教育スタイルです。教育とITを融合させるという点でeラーニングと似ていますが、EDTechはeラーニングよりも広義の学習スタイルを指すことが多いです。EDTechを活用することで地理的状況に縛られずに高度な学びの機会を得られるほか、教師と生徒がリアルタイムでやりとりすることで効率よく学習でき学習のモチベーションを保ちやすくなります。

EDTechの活用は、生徒だけでなく教員にとっても多くのメリットがあります。例えば教育現場用SNSを活用することで、さまざまな業務の負担軽減や生徒・保護者とのスムーズなやりとりに役立ちます。また教員の仕事はストレスが多いと言われることもありますが、学校の枠を超えて全国の教師とSNSで交流することでメンタルヘルスを保ちやすくすることにも役立ちます。

【参照】
文部科学省
「教育の情報化に関する手引」検討素案「第5章 初等中等教育における学習指導でのICT活用」
「次期学習指導要領を見据えたICT環境整備を進めましょう!新たな学びの実現に向けて」

Edmode
SENSEINOTE

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部