キャリア教育コラム

スマホ依存と学力の関係性 平均点数にして10点以上の差が

更新日:2018/11/30

国民のほとんどがスマートフォン(以降「スマホ」と記載)を持っている現代において、スマホ・インターネット依存症が新たな社会問題になっています。特に子どもや若者のスマホ依存症が問題視されており、近年の調査ではスマホの使用時間と学力に関係があることも明らかになっています。

多くの人がすでにご存知の通り、スマホはとても便利な道具です。しかし精神的に未熟な子どもや若者がスマホ依存症に陥るとインターネット上の世界と現実世界の区別がつきにくくなり、学力低下だけでなくさまざまなトラブルの原因となります。スマホ依存症を未然に防ぐためには、まず長時間のスマホ利用が引き起こす悪影響や対処法について知っておくことが大切です。

スマホ依存症の症状とは

特定非営利活動法人アスクによると、依存症は「何かの習慣的な行動が自分の生活や人生にダメージを与えているのに、意志の力ではそれがやめられない状態」を指します。もともとはストレス・寂しさなどを紛らわす目的で始めた行為が、習慣化することでだんだんコントロールがきかなくなることがあります。その行為をやめようとしてもやめられないために「やめられない自分はダメだ」とかえって自分自身を傷つけてしまい、そのストレスを紛らわすためにさらに依存するという悪循環に陥ります。

少し前まではアルコール・薬物・ギャンブル依存症などがよく知られていましたが、近年は若い世代を中心にインターネット依存症やスマホ依存症が増えています。ひとくちにスマホ依存症といっても、スマホを使って何をするかは人によってさまざまです。例えばSNSやメッセージアプリを使って他者とつながっていたいタイプ、ネットショッピングやオークション・フリマアプリにのめりこむタイプ(しばしばショッピング依存症と併発する)、スマホゲームなどで高揚感を得たいタイプなどがあります。また電子書籍や無料読書アプリの登場によって、それまでよく読書していた人がスマホを多用しはじめるケースもあります。

スマホ依存症が引き起こすさまざまな問題

スマホ依存症の程度や内容によっては、健康被害(視力低下・肩こりなど)やお金のムダ遣い(ショッピング・ゲームへの課金など)などの二次被害が起こる恐れもあります。特に子どもや若者は精神的に未熟なため自分を律することが難しく、友人から仲間はずれにされたくないなどの理由でSNSをズルズルと使い続けることも少なくありません。このほか、子どもが知らず知らずのうちにゲームに課金してしまうこともあります。

またSNSがきっかけでネットいじめや犯罪に巻き込まれたり、ネット上でのコミュニケーションにのめり込みすぎて現実世界でのコミュニケーションをうまく取れなくなったりするケースも少なくありません。これらの問題が、学力低下だけでなく不登校・引きこもり・心疾患(うつ病など)の一因となることもあります。

スマホ依存度のチェック

自分自身や周囲の人がスマホ依存症に陥っていないか知りたい場合は、和歌山県立医科大学の研究チームが発表しているスマホ依存度チェックを試してみましょう。以下の表の各項目に「該当する(3点)」「やや該当する(2点)」「あまり該当しない(1点)」「全く該当しない(0点)」のいずれかで回答し、すべての得点合計が高いほどスマホ依存度が高いと判断できます。ただし合計点数が低くても、思い当たる点が多いと感じたら要注意です。

 

 

スマホ依存が学習に及ぼす影響

東北大学と仙台市教育委員会が実施したアンケートから、数学のテストの点数と1日あたりの自宅学習時間、そして1日あたりのスマホ使用時間の関係性を表すデータを紹介します。

 

 

スマホの使用時間と成績はほぼ反比例する

1日あたりの自宅学習時間が2時間以上と回答した子どものうち、スマホの使用時間が1日1時間未満の子どもの平均点は75点、スマホの使用時間が2~3時間の子どもの平均点は65点、スマホの使用時間が4時間以上の子どもの平均点は58点となっています。自宅学習時間が30分~2時間の子どもや30分未満の子どもについてもおおむね同じ傾向が見られ、「自宅学習時間が30分未満」かつ「スマホを4時間以上使用する」と回答した子どもの平均点は48点にまで下がっています。

スマホ使用時間が長いと、自宅学習時間が長くても成績が上がりにくい

前項でも紹介した通り「自宅学習時間が2時間以上」かつ「スマホを4時間以上使用する」と回答した子どもの平均点は58点となっています。「自宅学習時間が30分未満」かつ「スマホを全くしない(持っていない)」と回答した子どもの平均点が63点であることから、たとえ自宅学習時間が長くてもスマホ利用時間が長いと自宅学習時間が短い子ども以上に成績が上がりにくい(または下がりやすい)ことがわかります。

スマホ依存が与える生活習慣への影響

総務省の調査(平成29年度 情報通信白書)によると20代のインターネット利用率は99%、そのうち88%がスマホでの利用がメインとなっています。この結果を受けて四国大学短期大学部の片山友子氏と兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科の水野由子氏が共同発表した論文「大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関連性」によって、スマホ依存が生活習慣に大きな影響を与えることが明らかになりました。

調査に使用された指標について

生活習慣と健康度を数値化するために論文内で用いられた評価指標について解説します。この論文では、調査対象者となった大学生188人のうちインターネット依存傾向が高い80人(58%)をⅠ群、インターネット依存傾向が低い58人(42%)をⅡ群として、次の2つの指標を使って調査を行いました。

DIHAL.2(健康度・生活習慣診断検査)

DIHAL.2(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)によって、日常生活における心身の健康状態を把握することができます。健康度・運動・食事・休養の4尺度に分かれた47の質問項目に5段階評価で回答していき、各尺度の合計点数が高いほど健康的な生活を送っていると判断されます。

POMS(気分プロフィール検査) POMS(Profile of Mood States)では、緊張感・不安感(T-A、9項目)、気分の落ち込み(D、15項目)、不機嫌・イライラ(A-H、12項目)、活気・意欲(V、8項目)、活力低下や疲労(F、7項目)、混乱(C、7項目)の6種類の尺度を測定することができます。

調査結果 スマホ・ネット依存が生活習慣に与える影響

2つの指標の調査結果をまとめたものが次の表です。

 

この表より、DIHAL.2では全ての尺度においてⅠ群の合計点数がⅡ群を下回っていることがわかります。中でも、精神的健康度・運動意識・睡眠の充足度の項目において特に大きな差が見られます。
またPOMSではⅠ群はⅡ群に比べて緊張感・不安感(T-A)、気分の落ち込み(D)、不機嫌・イライラ(A-H)、混乱(C)の値が高い傾向を持つことがわかります。

この論文から、インターネット・スマホの利用時間が長いと睡眠不足に陥りやすく、勉強をはじめさまざまな活動に影響を及ぼすことがわかります。また睡眠時間が不規則になることで運動機会の減少や食生活の乱れなどが引き起こされ、健康を損ねるリスクが高くなります。さらにインターネット・スマホの利用時間が長いと落ち込み・イライラ・混乱などのネガティブな感情が高まりやすくなることも明らかになりました。

自力での解決が難しい場合は、専門機関に相談を

親や教師が「スマホはダメ」と頭ごなしに禁止してもかえって子どもから反発されたり、隠れて使用されたりするかもしれません。またある程度の年齡になった子どもの多くは部活動や塾で忙しく、両親が共働きで帰りが遅くなる家庭も多いため、親子ともにスマホなしの生活など考えられないというケースも多いでしょう。子どもがスマホと上手に付き合うためには、なぜ長時間のスマホ使用がいけないのか・スマホが原因で起こるトラブルをどのように防ぐかを大人がきちんと説明する必要があります。

スマホ依存症に限らず、依存症を自力で解決することは簡単ではありません。子どものスマホ依存症を周囲の大人だけで解決しきれない場合は、遠慮せず専門機関に相談しましょう。相談先としては、各自治体の相談窓口(精神保健福祉センターなど)や地域の精神科・心療内科などが適しています。全国にまだ数ヶ所ではあるものの、ネット・スマホ依存症専門の医療機関も存在します。

子どもがスマホと上手に付き合うために

スマホは、大人だけでなく子どもにとっても便利なコミュニケーションツールとなっています。しかし、スマホの長時間使用が子どもの学力低下の一因となることが明らかになっています。今回紹介した学力調査では、スマホの使用時間が4時間以上の子どもは1時間未満の子どもに比べて20点近く低い結果になりました。自宅学習時間が同じでも、スマホの使用時間によって大きな差が表れたのです。

子どもや若者がスマホ依存症に陥ると、学力低下だけでなく生活習慣や心身の健康へさまざまな悪影響が及びます。しかし、現代の子どもにとってスマホは大切なコミュニケーションツールのひとつでもあります。子どものスマホ使用をむやみに禁止するより「スマホ使用は1日1時間まで」「食事中や寝る前は使わない」などのルールを決めて使うとよいでしょう。ルールを決めるときは、子どもと大人の双方が納得できるようきちんと話し合いながら決めましょう。

【参考】
特定非営利活動法人アスク「依存症って何?」

和歌山県立医科大学公衆衛生学教室 戸田雅裕、西尾信宏、竹下達也「新しいスマートフォン依存尺度の開発」

学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト東北大学加齢医学研究所・仙台市教育委員会 H28.3発行「仙台市の子どもの学力とスマホの関係」

片山友子、水野(松本)由子「大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関連性」

総務省 情報通信白書

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執筆者:キャリア教育ラボ編集部