キャリア教育コラム

学習指導要領改訂のポイント 「アクティブラーニング」から「道徳教育」まで

更新日:2018/11/01

2017年に戦後9回目の学習指導要領改訂が行われました。今回の改訂では、学校と社会のつながりや主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)の重視、そして近年メディアでも話題になっているプログラミング教育・外国語教育・道徳教育などの導入が大きな特徴となっています。

グローバル化や価値観の多様化によってこれまでの常識が大きく変化しつつある現代。新学習指導要領には、未来を担う子どもたちがこうした変化に対応し、社会で生きる力を身につけるためのポイントが詰まっています。

これからの教育課程の理念と指針

 

新学習指導要領では、今後の教育課程における理念と指針が次のように掲げられています。

よりより学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質、能力を身につけられるようにするのかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていく。

<社会に開かれた教育課程>
①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。

文部科学省「平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料」より引用

今後の教育は学校の中だけで実施し完結させるものではなく、地域の人やものと積極的に関わりながら学ぶことを重視しています。こうした学びを通して社会との結びつきを強め、社会に出てから生き抜くための力を育てる狙いがあります。

主体的・対話的な深い学び

新学習指導要領では「主体的・対話的な深い学び」を全教科において行っていくことが定められています。主体的・対話的な深い学びの中には、近年注目されているアクティブラーニング(能動的な学習)も含まれています。

アクティブラーニングは、生徒の主体的な学びを重視する学習方法です。従来の授業では、教師から生徒へ一方的に知識を伝える座学スタイルの講義がメインとなっていました。一方、アクティブラーニングではディスカッションやフィールドワークなどの学習活動をカリキュラムの主体とすることで生徒ひとりひとりの意欲を高め、積極的な学びへの関わりを促す狙いがあります。アクティブラーニングにおける教師の役割は、知識を生徒に受け渡し評価する役というよりは生徒の学びを見守り必要に応じて助けるサポーターに近いと言えるでしょう。

主体的・対話的な深い学びにおいては、教師と生徒の関わり方を見直すだけでなく生徒同士や地域・社会とのつながりも重視し、ときには先人の例に倣うことで生徒が自らの考えを広げ、深め、対話的な学びを実現します。そして知識や技能の習得・活用・探究を通してさまざまな分野の知識を関連付けることで理解を深め、また自ら課題を見つけて解決方法を考え、自分の考えをもとにした新しいものの創造につながる深い学びを実現させます。

こうした主体的・対話的で深い学びは、単にテストで良い点を取って評価されるためだけの勉強ではなく生きて働く知識・技能の習得に繋がる学びとなります。学校教育において「学び方」そのものを学ぶことで、生涯にわたって能動的に学び続け自らを高め続けることが可能になります。

育成すべき3つの資質・能力の3つの柱

新学習指導要領では、すべての教科・科目を「知識および技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱で再整理しています。これらの3つの柱によって「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しつつ、授業の創意工夫や教材の改善を促し、生徒たちの確かな学力・豊かな心・健やかな体を総合的に育てることで生きる力を伸ばす狙いがあります。

※文部科学省「平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料」より引用

知識と技能の習得とは

特に歴史や英語などの科目において暗記は大きなウエイトを占めますが、答えだけを丸暗記するのではなく、その問題が持つ背景や法則性などについて深く考える力が今後より重視されます。教科・科目にとらわれずさまざまな物事を関連付けて考え、社会の中で実際に役立つ知識とすることで、生きる力を伸ばすのに役立てます。

例えば日本史なら「1185年に源頼朝が鎌倉幕府を作った」というような表面的な事実だけでなく、なぜ源頼朝が幕府を作ったのか、なぜ新しい本拠地として鎌倉を選んだのか、そもそもなぜ源氏が平氏を滅ぼしたのか…というようにその事実に至った背景や前後の出来事なども含めて幅広く学びます。さまざまな出来事の因果関係を知ることで一連の出来事を効率よく覚えることができ、日本史そのものへの興味も湧きやすくなるでしょう。また何かをしたときに自らの行動を振り返る、あるいはこれからの自身の行動を決めるにあたって、歴史上の事実から学べることも少なくないでしょう。

カリキュラム・マネジメントの重要性

主体的・対話的で深い学びを指導していくためには、教育者側もまた変化しなければなりません。新学習指導要領で示されているカリキュラム・マネジメントは、以下のような3つの側面を持っています。

1.各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点て、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していく。
2.教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立する。
3 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせる。

(「平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料」より引用)

各学校でカリキュラム・マネジメントを実現することは、社会に開かれた教育課程の実現につながります。よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという共通の目標のもと、学校は社会とつながり、時には協力しながら未来の担い手である子どもたちの資質・能力を育てます。

すべての学校で全く同じカリキュラムを採用するのではなく学校・地域ごとの特色を活かし、必要に応じて学校外の人やものを活用したカリキュラムを作ることで、生徒たちが身近な社会とのつながりを実感しやすくなるでしょう。もし生徒や地域の状況が変わった場合、それまでのやり方に固執せず柔軟に対応・改善することも重要です。

何を教えるのか

これからの時代に必要とされる資質・能力を身につけるため、新しい教科・科目が設置されます。現在小学校では外国語教育の教科化やプログラミング教育の必修化などが予定されており、一部の自治体・学校では少しずつ導入され始めています。また、必要に応じて既存の教科・科目の目標や内容の見直しを行うとともに各教科などで身につける資質・能力を明確にし、そのための目標・内容を構造的に示します。なお、学習内容の削減は行われていません。

どのように教えるのか

主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)の視点から、学習過程を改善します。これまでは1コマだけで完結する授業スタイルが主流でしたが、新学習指導要領では数コマの中で習得・活用・探求まで行うことが重要とされています。アクティブラーニングの代表例でもあるグループワークや体験学習などの学習方法も、新しい授業スタイルに該当します。

学びの質の向上

これまでの教育でしばしば重視されていた暗記のウエイトは低くなりますが、日々の学習への取り組み方や思考を重視することでより深い理解につながり、表面的な知識の詰め込みばかりに頼らずに学習内容の量・質を保つことができるでしょう。

教師には、生徒への一方的な指導ではなく生徒の学びのきっかけ作りや気づきへの誘導などが求められます。そのためには教師個人だけでなく学校の指導体制そのものを充実させること、家庭や地域と連携・協力することなどが必要です。

新学習指導要領の内容には過去の詰め込み型教育やゆとり教育の反省点が活かされていますが、必ずしもこれまでと全く異なる指導方法を導入しなければならないわけではありません。ベテラン教員たちが過去に蓄積してきた教育ノウハウを若手教員に引き継ぎつつ、今後生徒たちが身につけるべき資質・能力にあわせて授業を工夫・改善することが必要となります。

新たな道徳教育

小学校では2018年度、中学校では2019年度から、道徳の時間を「特別教科 道徳」として新しく位置づけることが決まりました。新学習指導要領では道徳科に新たに検定教科書を導入し、体験的学習や問題解決型学習などを取り入れて指導方法を工夫することが定められています。学習内容は、いじめ問題などへの対応を充実させつつ発達段階をより深く踏まえた体系的なものに改善されます。

道徳科は他の教科・科目のように答えが決まっておらず、テストの点数などで評価しにくいという特徴があります。そのため単純な数値や他の生徒との比較によって評価するのではなく、記述式によって答えのない課題に向き合い議論する姿勢や学習状況、そして道徳性にかかわる成長の様子などを認めることで評価します。

他の教科・科目と同じく、道徳科でも教師から生徒へ一方的に知識を伝えるだけでなく生徒ひとりひとりが自分の意見を持ち、他の生徒と議論することを重視します。例えばあるクラスでいじめが起こった場合「どんな理由があってもいじめは良くない」「容姿・価値観・立場などが違う相手を受け入れるのは難しい」などさまざまな意見が出るでしょう。道徳科では課題に対してどのような答えが正しいか、どうすれば解決できるかを決めるより「自分ならどうするか」という観点から課題と向き合いつつ異なる意見の人と議論し、問題を多角的に考えることが求められます。

まとめ

学習指導要領の改訂はこれまでにも何度か実施されてきましたが、今回の改訂では学びの内容だけでなくどのように学ぶかについても詳しく言及されています。生徒には、ただ与えられた課題をこなすだけでなく学ぶことそのものの意味を知り、学びを通して得た知識・技能を社会に出てからうまく活かすことなどが求められます。生徒ひとりひとりの発達・習熟度や社会の流れに合わせた細やかなカリキュラム作りが求められるため、生徒だけでなく教師にも常に学び続ける姿勢が求められます。

このように資質・能力を伸ばすことを主な目的とする教育は、海外ではすでに広く導入されています。また小学校教育に外国語やプログラミングが取り入れられていることからもわかるように、グローバル化社会・情報化社会への対応も新学習指導要領の目標のひとつとなっています。国を挙げて新しい教育方法を導入することは、個人の生きる力を高めるとともに国際的な競争力を高め、国そのものを豊かにすることにもつながっていきます。

【参考】
平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料

PBL/アクティブラーニング実践BOOK PBL/アクティブラーニング実践BOOK
     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部